「日本の#MeToo、その発生から一年後。--社会的圧力により鎮圧された運動」Journal du Japon

TEXT by Margaux Suret 2018.10.5

海外では、#MeTooムーヴメントにより、セクハラについて被害者たちが語り始め、対話がオープンなものになった。しかし日本は、2017年10月のワインスタインの事件を受けてソーシャルメディア上で発せられた警告に対して未だ沈黙し、ほとんど無関心なままである。
いくつかの問題が白日のもとにさらされたにもかかわらず、この国は、この禍に対するより良い対策を取り、その被害者たちを守るために必要な措置を示すことに苦労している。そこで本サイトでは、#MeTooが起こってから一年後の日本での現状分析を行う。

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©Tom reed(BBC)

遠慮がちに挙げられたいくつかの手

ワインスタインの事件は、アメリカ国内と同じく、そのほかの国々のメディアでも大きく取り上げられた。アメリカ映画界の教祖的人物の一人が、何人もの世界中で有名な女優たちから、性的暴行、精神的圧力、そして権力の濫用で告発されたことは、無視することのできない出来事である。たくさんの女性たちが日常的に同じような虐待を受けているとはいえ、公人で権力のある男性を告発することは、同じように自身の被害を告発するたくさんの人たちを勇気づけるからだ。さらに#MeTooのスローガンはいくつもの国々で発せられた。#BalanceTonPorc#QuellaVoltaChe #YoTambien #jagocksa

たとえ日本では#MeTooがほかの国々と同じようには広がっていなかったにせよ、加害者と、この種の不法行為を助長するシステムとを告発するために、何人かのハラスメントと性暴力の被害者たちが声を上げた。

伊藤詩織さん。日本の#MeTooの象徴

伊藤詩織さんの身に起こったことは、2017年5月に公になり、しばしば、ワインスタインの事件に続くものとして引き合いに出される。彼女は加害者を告発するだけでなく、レイプ被害者たちの受け入れに関する日本の行政システムを告発するために、公の場で声を上げた最初の被害者たちのうちの一人だ。そうして彼女は、日本での性暴力に対する闘いの象徴的人物の一人となった。
2017年5月、記者会見の場で、伊藤詩織さんは、有名なジャーナリストで、安倍晋三首相に近い人物である山口敬之から、2015年、飲み物に薬を混ぜられ、レイプされたと打ち明けた。

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インタヴューに応じる伊藤詩織さん ©AP Photo/Mari Yamaguchi

二人は食事をしながら仕事の話をするため、東京のレストランで落ち合った。彼女は、彼の編集部でインターンとして働くことを望んでいた。彼女は食事の最中に気分が悪くなり、化粧室に行き、そこで意識を失う。ホテルの一室で目覚めた彼女は、意識ははっきりとせず、方向を見失った状態で、気が付くと、山口敬之にレイプされている最中だったという。彼女は逃げ出したが、ショック状態にあり、警察に行ったのは5日後のことだった。担当の捜査官は、ジャーナリストとしてのキャリアが傷つかないよう、彼女に告訴を取り下げることをすすめた。しかし、彼女は取り下げなかった。その後、加害者に対する逮捕状が出され、加害者は逮捕されるはずだった。しかし、警察は、刑事部長で首相のもう一人の側近である人物からの電話を受け、逮捕を取りやめた。加害者を告発する多くの証拠(いくつかの証言、指紋、防犯カメラの映像)があるにもかかわらず、加害者は証拠不十分で不起訴となった。このようなことから、彼女は自身の身に起きたことを公にした。加害者が切り抜けるのを目にした伊藤詩織さんは、その上さらに、前例のないバッシングの標的となった。彼女は特に、世間の人たちから、「暴行を受けた責任は彼女にある」、「服装や振る舞いが被害者らしくない」という風に非難された。そしてまた、勇敢にも公の場で被害について話したために、侮辱さえ受けた。自身と家族の身の安全を恐れた彼女は、日本を離れなければならなかった。

福田淳一、嵐に見舞われた政府

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©JIJI PRESS/AFP

2018年4月、財務省福田淳一事務次官(当時)が、複数のジャーナリストからセクハラで告発され、辞任した。彼は様々な会談の場で、性的な意味を含む、場違いな発言をしたという。当初、福田を告発した最初の女性は匿名で語っていたが、結局、自身がテレビ朝日で働いていることを打ち明けた。これは、自身の証言の信憑性が損なわれることを恐れてのことである。さらに、彼女は雇い主にこのことを伝えていたが、雇い主は、否定的な反響が起こることと、特に彼女の身元が明らかになることを避けるため、彼女に黙っているようすすめたという。このスキャンダルは、日本で性暴力を告発することが、未だどれほど困難であるかをよく示している。テレビ朝日の支援を得られなかった彼女は、事件を白日の下にさらすために他のメディアに近づいた。
この事件によってもまた、日本のジャーナリズムの闇の部分に光が当てられた。実際、この種の事件は業界内でありふれたものとなっている。2018年に大阪国際大学の谷口真由美教授によって実施されたセクハラに関する調査によると、日本のメディアで働く女性たちの受けた156件のセクハラのうち、40%が職場で起こっているという。編集部のなかでさえセクハラが起こっており、そして、事件の三分の一が権力者たち(警察、立法者、政府のメンバーなど)によって引き起こされている。残念なことに、この種のありふれた振る舞いは、様々なメディアの幹部によって黙認されている。そして、被害者たちは自身のキャリアが損なわれることを恐れており、従って、セクハラが告発されることはほとんどない。

ポップアイドル、真っ先に被害にあう存在

ポップアイドルたちは、しばしば、加害者たちの一番の標的となる。ごく若いうちにスカウトされ、彼女たちは非常に問題のある諸々の契約にサインする。その契約とは、たとえば、仕事に身を捧げるため学業を諦めることを彼女たちに強いたり、さらに、彼女たちの「純潔」を守るため、恋愛を一切禁止することを強いたりするものである。アイドルは、その大部分が男性であるファンにのみ、身を捧げなければならない。彼女の生活は、自身がサインした契約によって制限される。若く、影響されやすい彼女たちは、マネージャーやレコード会社、そして彼女たちの仕事を手中に収める、その他の影響力ある人々の支配下に置かれている。

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虹のコンキスタドールの元メンバー、Aさんが性暴力の被害にあったのは、彼女がまだ未成年だった頃のことだ。彼女は匿名性を守るため、仮名でBuzzfeed Japanに、自身に起きた出来事を語った。彼女は、日本のソーシャルネットワーキング会社、Pixivの代表取締役でグループのマネージャー、永田寛哲を告訴した。彼女が一人で京都に行かなければならなかったとき、永田寛哲は彼女に付き添って一緒に京都に行くことにした。そして、旅館の部屋を一部屋だけ取り、その部屋で自分と布団を並べて寝るよう、彼女に強制した。嫌だったが、Aさんは自身のキャリアが損なわれることを恐れて、抵抗しなかった。永田は、彼の「お気に入り」であるAさんの、金銭問題をも利用した。(原注 彼女はアイドルとしての仕事で、月3万円(約230ユーロ)の収入しか得ていなかった)彼女は実際、収入を補い、そうして彼女に仕送りをしてくれている両親の負担を軽くするために、副業をしたいと思っていた。しかし、彼女はマネージャーの永田の同意を得る必要があり、永田は彼女の訴えを拒否した。彼はAさんに個人的に給与を支払うことを提案し、見返りに全身マッサージを求めた。この時、またしてもAさんは拒否する勇気を持つことができなかった。彼を不愉快にさせるのが怖かったのと、自身のキャリアを危うくするのが怖かったからである。
最終的にAさんがグループを脱退することを決めたのは、永田寛哲の家に滞在していた際、浴室で(隠し)カメラを見つけたからだった。家への招待は無害なものに思われた。この時、グループはイヴェントに参加しなければならず、家族も一緒だから、ホテルに泊まるよりも、むしろ自分の家に滞在するよう、彼はAさんを自宅に招待していた。Aさんは、彼の家族も一緒なので、何も怖がることはないと思っていた。しかし、その滞在中、彼女は浴室や他の部屋に、いくつものカメラが設置されていることに気づいた。これらの非難を受けた永田は、事件の大部分について認めた。しかし、カメラを自宅に設置したことに関しては否定したままだ。彼は会社のイメージを損なうことを避けるため、役職を離れた。Aさんは、今のところ歌手としての夢はあきらめ、学業を再開する予定である。
あまり好ましくない環境
日本ではレイプやほかの暴力はめったに起こらない、と言うことはできない。事件はまさしく存在している。というのも、私たちはこれまでに起こった出来事を通じて、日本での性暴力は、決して稀なことではないのを目にすることができたからだ。しかし、性暴力事件について話すことは未だタブーだ。レイプ被害者の58,9%が、被害についてだれにも話さなかった。友人たちや家族に対してさえもである(2017年に実施された政府の調査による数字)。そして、レイプ事件が告訴の対象となる割合は、わずか4%だ。
これらの暴力に対する告発が、ほんのわずかにしかなされないという状況を理解するために、日本のシステム全てに光を当てることが重要である。比較として挙げておくが、フランスでは、レイプ事件が告訴の対象となる割合は、11%である。
「黙って、泣き寝入りしろ」
日本で女性であることは、恵まれたことではない。日本は、世界経済フォーラムジェンダーギャップ指数で、144か国中114位に位置している。これは先進国として、あまりにひどい結果だ。その上、賃金格差や、管理職にほとんど女性がいないといったことも、社会での女性の位置づけについて理解しなければならない事柄の一つだ。日本の女性たちは、ずっと以前から後退した位置での役割を演じている。会社で管理職に就くことのできる女性は、ごくわずかだ。なぜなら、世間は次のように考えるからだ。
(1)女性は母親としての役割に身を捧げ、結婚したら会社を辞めなければならない。
(2)女性よりも男性のほうが管理職の仕事をよくこなす。
私たちは、2007年の、柳澤伯夫厚生労働大臣の、「女性は産む機械」という発言を思い出す。女性は、子供と夫に身を捧げなければならないというのだ。
『The New Paradox for Japanese Women: Greater Choice, Greater Inequality』の著者、橘木俊詔教授はこう語る。
「結婚した女性の40%が、個性と生活習慣とを家族のために犠牲にするのを、当然のことと考えています」
つまり、日本の女性たちは、以前から、主人や家、そしてこの家父長制社会の中で支配的な位置を占める男性たちに対して、より一般的な仕方で、服従した役割を演じてきたのである。日本では、個性よりも集団主義に優位性を与える傾向があることも否定できない。
「出る杭は打たれる」
これは他にいくらでもある諺のうちの一つだが、現状をよく物語っている。個性の表現の場、 あるいは、性暴力の告発を引き起こす、社会的無秩序と共通点を持つ事柄を表現する場がほとんど存在しないことがよくわかる。世間の人たちは、社会の機能不全を認めることより、この問題に対して目を閉ざすことを選ぶだろう。公共交通機関にはびこる変質者、「痴漢」の被害者たちがそのことを証明する。つまり、ほかの乗客たちは彼女たちを助けに来てくれないのだ。被害者たちには、加害者たちと対決する勇気はない。それは加害者を恐れてではなく、他人の目を恐れてのことだ。
女子中学生たちと女子高校生たちは、この一般的無関心の一番の被害者だ。車内の混雑は加害者たちが思いのままにふるまうことを可能にし、被害者たちは抵抗することができない。佐々木くみさんは、まだ12歳の時に、男性から意に反して体を触られた。彼女は学校の先生と母親にそのことを話そうとしたが、 二人とも何もしてくれなかった。聞き入れられ、支援を受けられる可能性がないため、彼女は日常を語るため、そして日本社会の事なかれ主義を告発するために、『痴漢』という本を(フランス語で)書くことにした。

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周囲の人たちの無関心に直面し、被害者たちは稀にしか告訴をしない。日本では襲われた女性は穢されたものとして見られ、従って社会から見て、不名誉な存在だと見做される。多くの場合、ごく若い女性たちは「泣き寝入り」するよう繰り返し言われる。この言葉は「眠るまで泣く」と訳すことができ、「忘れるために泣く」という意味を言外に含んでいる。10代の子たちは、幼少のころからこれらの問題を提起しないよう、心理的に条件づけられている。しばしば、他の多くの国でと同じように(男性優位主義もまた、日本の専売特許ではない!)、女性たちは注意をするよう、夜間に出歩かないよう、そして男性を誘惑しないようにきちんと服を着るよう求められる。ところが、男性たちはいかなる場合も、女性たちをうるさがらせることのないよう、または女性を襲わないよう要求されることはない。例えば伊藤詩織さんは、ジャーナリストの男性と二人きりで会ったことで非難された。国営テレビ局NHKの調査によると、日本人の27%が、二人きりで酒を飲むのに同意することは、性的同意を意味するだろうと答えている。従って、性暴力は女性のふるまいの結果であって、男性の無礼なふるまいの結果ではないというのだ。被害について話すことは、調和を探し求める社会から見て、ある一人の被害者から、具体的な当事者へと移っていくことを意味する。
捜査の間も苦難は続く
告訴をする際にも、被害者はいくつもの障壁にぶつかる。周囲は被害者に、告訴を思いとどまらせようとする。担当の捜査官たちは、告訴によってもたらされる重大な結果について、くどくどと言う。特に、告訴した当人の身元を公にしなければならないことについてである。
ところで、性暴力の被害にあうことは、恥と見做される。そして告訴することもまた、日本社会から見て、被害者の失寵に光をあてるものと見做される。
「それは自分のキャリアにどのような重大な結果をもたらすのだろうか?(告発後も)男の人から女性として受け入れてもらえるだろうか?」
もし、これらの疑問が告訴の際に被害者の頭に自然と思い浮かばなくとも、このような沢山の疑問が、警察官たちから持ち上げられる可能性がある。伊藤詩織さんの場合はこうだった。
「彼ら(警察)からは、もし告訴をしたら、私が日本で望んでいた人生を歩めなくなるだろうと言われました。もし私が日本でジャーナリストとして働きたいと思っていても、その夢を諦めなければならないというのです」

 

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©Noffar Gat

告訴を強く主張する勇気を持った被害者たちには、長い苦難の道が続く。被害者たちもまた、捜査はセカンドレイプのようなものだと語る。被害者たちは、複数の警察官に囲まれた状態で、人形を使って被害を再現するよう求められる。警察官たちは写真を撮り、ノートを取り、場面についてコメントを加える。伊藤詩織さんはこう語る。
「私は床に寝そべらなければなりませんでした。カメラを持った3、4人の捜査員がいて、等身大の人形を私の上にのせ、人形を動かし、写真を撮っていました」
この屈辱的な体験は、すでに傷ついている被害者たちの心の傷を、さらに深くするものでしかない。そしてもしかすると、(このような捜査が行われることは)性暴力の告発にブレーキをかけてしまうかもしれない。多くの場合、捜査は行われず、加害者たちが起訴されることはない。日本では、例えば、暴力や脅迫が行われなければ、事件はレイプとして認められないことを知っておかなくてはならない。伊藤詩織さんの場合は、準強姦といわれる。これは、意識を失っているか、あるいは抵抗できない状態の人との間に持たれた性的関係のことを言う。日本では性犯罪は小さく見積もられ、刑罰は多くの場合、軽すぎて話にならない。つまり、(レイプの)刑期はせいぜい5年なのだ(2017年の法改正以前は、3年だった)。有罪判決が下されることは実に稀で、被害者たちは幻滅し、告訴をしても利益がないと思ってしまう。フランスでは、レイプ犯には懲役15年の刑が科される可能性がある。暴力や暴力未遂には、5年の懲役と75,000ユーロの罰金が科される。しかし日本と全く同じように、フランスでも、有罪判決が下されることはほとんどない(フランスでレイプが有罪となる割合は、たったの1%である)。
したがって、被害者たちに対する、日本の行政の受け入れ体制は不十分で、このことは、被害者たちに否定的な影響を与えている。これが、告訴のために奔走する被害者がほとんどいない理由だ。被害者たちに対する精神的支援と、彼女たちにより良いかたちで寄り添うことが、おそらく告発の増加に通じるのではないだろうか。
いくつかの認められる進歩
たとえもし、#MeTooムーヴメントが海外に比べて重要性を持っていなかったとしても、日本でこのムーヴメントがまったく無視されていたわけではない。何人かの女性たちが、伊藤詩織さんやテレビ朝日の記者のように、公然と発言をした。いくつかの訴訟は進行中で、暴力を告発されて辞職せざるを得なかった男たちもいる…。たとえそれが不完全であったとしても、この言葉の解放(性暴力についてオープンに話すこと)によって、日本社会の自覚が大きく促された。そして、被害の防止と支援のための、いくつかの率先した行動が生れた。
2017年、性暴力に関する日本の法律が、この110年で初めて改正された。レイプの定義は口腔性交や肛門性交にも拡大され、レイプの刑期は在来の懲役3年から、5年に延長された。この延長は不十分だとして、大きく批判された。(レイプは親告罪ではなくなり、)今後、当局は、被害者が告訴をしないと決めた場合でもレイプ犯を起訴することができる。そしてようやく、男性もレイプの被害者として認められる。政府には、これらの措置を実際にとり、性暴力被害者たちに対する、より一層の配慮がなされることを証明するという仕事が残されている。政府は現在、被害者たちがより容易に支援を受けられる、受け入れセンターを作っている。これらのセンターによって、日本人のこの問題に対する関心を呼び覚ますことができるだろう。これらのセンターの出現は少し遅く、いくつかの被害者支援団体が、すでにそのような場所でイニシアティブをとっている。
一人の女子高校生が、痴漢に反対するバッジを提案した。彼女自身も痴漢の被害者で、彼女は闘うことにした。そして、彼女はカバンに付けるバッジを作った。バッジには日本語で、「痴漢は犯罪です。私は泣き寝入りしません」と書かれている。

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彼女はこのバッジを付けて電車に乗るようになってから、一度も痴漢に遭っていないという。痴漢抑止活動センターは、彼女の話を聞き、バッジ製作のためのクラウドファンディングを呼びかけた。このバッジは、今では、東京の小田急線の駅や、原宿のショップで販売されている。電車内には、痴漢を防止するためのポスターが貼られており、被害者たちは痴漢を通報したり、告訴したりする気を起こしている。
いくつかの前進の中で最も象徴的なのは、この問題に対する自覚が広がったことである。#MeToo以後、公の場での告発は、新たな広がりを見せている。これらの問題を扱うことに対して非常に及び腰だったメディアも、事件について語り始めた。公然と声を上げた被害者たちは、これから話そうとしている他の人たちに勇気を与えている。もはや、フェミニストたちだけが闘いをリードしているのではない。主として東京で、いくつかのデモが開催され始めた。そして、#MeTooムーヴメントは、被害者たちへの連帯のしるしとして、#WeTooに変化した。

 

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2018年4月に東京で開催された、セクシャルハラスメントに反対するデモ ©BLOOMBERG

たとえ、ほかの海外の国に比べて、このムーヴメントが大きな結果をもたらしていなくとも、私たちにできるのは、変化や、実際に取られている率先した行動を、励ますことでしかない。被害者たちだけが先頭に立って闘う、というのであってはならない。そうではなく、システムが変化するために、社会全体がこの問題に対して自覚を持たなければならない。道は長く、困難に満ちているだろうことは、伊藤詩織さんの件がよく示している。しかしそれは、すべての性暴力被害者たちのために、そして、新しい世代の人たちのために必要な闘いなのである。(了)

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