「ハッシュタグ#StandUpJapan によって、一人の女子学生が、日本をその性差別の問題と向き合わせる」HUFFPOSTフランス版

(2019年)1月4日、性差別的な記事を告発することで、21歳の女子学生が、日本の性差別に反対する国際的なムーヴメントを生み出した。

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TEXT by Victor Brochard-Lebrun 2019.2.4
この数年間、日本では社会の中での女性の地位と、戦後の日本人のメンタリティとの問題が、わずらわしい問題として、また、解決に至らないため黙殺される難題として、絶えず表面化してきた。
これは雑誌「Spa!」にとって、予想もしていなかったしっぺ返しだ。数日間だけで、国内外の数多くのインターネット利用者たちが、この男性週刊誌の性差別的で、女性たちを侮辱する言葉を告発するために、この形作られたムーヴメントに参加した。憤りの理由はこうだ。「Spa!」2018年11月25日号に、あるインタヴューが掲載された。このインタヴューの中で、出会い系サイトの主催者が、飲み会で性的関係を得るために「最も簡単に」口説くことのできる女子学生の通う大学ベスト5のランキングを作成したのだ。それからインタヴューの中では、これらのいわゆる「簡単な標的」を見分けて口説くための、最もよい方法についての助言を提供している。
この種の言説は、「Spa!」の紙面ではいつも見られるものだ。この雑誌はしばしば、大人の女性や、様々な職業の女性たちの性的愛情のしるしを受け取るための戦略を、読者に提示する記事を含んでいる。しかし今回、このインタヴューは、東京の国際基督教大学の学生、山本和奈さんにショックと怒りとを引き起こした。彼女はこう語る。
「私は偶然、インスタグラムに投稿されたこの記事を見つけました。その言葉と、学生たちに与える重大な結果を気にかけずに大学を実名で掲載したこと、そして女性をモノのように扱うその言葉の選び方とに、私は胸がむかつきました。そこで私は、個人のレヴェルで反対しなければならないと決意しました」
2019年1月4日、彼女はフェイスブックで、「Spa!」からの謝罪を得るためのネット署名を開始することを、日本語と英語、そしてスペイン語とで発表した。彼女はまたそこで、日本での女性の地位に関する不満を示している。
「丸々として血色のいい顔を好む男性達のフェティシシズムを満たすために、ビキニを着た女の子たちが利用されるこの社会に、私はウンザリしています。(中略)お願いです、日本を変える手助けをしてください」
彼女の打ち明けるところによると、彼女は当初、この活動の成功にあまり期待をかけておらず、一番よくて、数百筆の署名が集まる程度だろうと思っていたという。しかし、ほぼすぐに世界中から支援の波が押し寄せ始め、週末には署名の数は25,600筆に達した。そして、山本さんのもとには様々なSNSを通じて、励ましのメッセージが寄せられた。彼女は行動を続けることを決意し、日本での性差別と闘う彼女のプランを練ったビデオを公表した。そこでまた熱狂的な反応が増加し、ハッシュタグ#StandUpJapan とともに広がったこの運動は、ついにメディアの関心を引いた。1月9日、山本和奈さんは、日本のテレビ局TBSのスタジオに姿を現した。この番組に同じく参加した、「Spa!」の編集責任者との会談のためにである。彼は雑誌を代表して、用いられた言葉と大学を実名で掲載したこととを謝罪した。しかし、記事の内容についての謝罪は一切なされず、そのせいで山本さんは、対談を不満足なものに思った。彼女はこう解説する。
「「Spa!」は、記事の主題そのものが、日本で男性たちが女性に対して抱いている考え方に関する問題を示していることを理解していません」

わずらわしい問題

この数年間、日本では社会の中での女性の地位と、戦後の日本人のメンタリティとの問題が、わずらわしい問題として、また、解決に至らないため黙殺される難題として、絶えず表面化してきた。このことが、日本に性差別と性不平等とが現れ続け、時には圧倒的な形でこれらの問題が現れることを食い止めることができない原因となっている。2018年の世界経済フォーラムジェンダーギャップ指数で、日本は149か国中、110位にランク付けされた。同年、内閣府男女共同参画局の実施した調査によると、質問を受けた日本人のうち74,2%が、男性は常に優先的な扱いを受けていると答えている。あたかもこの意見を裏付けるかのように、昨年(2018年)12月、いくつもの医学校が、男性受験者たちをえこひいきするために、試験の際に彼らに下駄をはかせていたことを認めたのだ。国際基督教大学教養学部アーツ・サイエンス学科の加藤恵津子教授の目には、この執拗な差別は、男性たちが、昔に比べて今や社会の中によりよい形で組み込まれ、アクティヴになっている女性たちに、自分たちが取って代られるのを目にする恐怖から生じているように映ってる。教授は、#StandUpJapan を生み出す元となった「Spa!」の記事の主題を明らかにするために、張り切っている。そして次のように分析する。
「この記事は、読者と男性編集者たちとの恐れと劣等感とを示しているのだと思います。彼らは、女性たちが今ではよりよい教育を受け、より勇敢になり、そして彼らより有能であるかもしれないことに気づいているのです。それがこの場合、彼らが一般女性をけなすことはしないのに、女子大生をけなすことをする理由です。つまり彼らが女子大生をけなすのは、彼女たちが高等教育を受けているからなのです」

沈黙の掟

しかしながら、多くの女性たちが、これらの性差別的な振る舞いに反対することをためらっているように思われる。ヨーロッパやアメリカで、#MeTooが女性への暴力に対する文字通りの告発キャンペーンを生ぜしめていたとき、日本で#MeTooは、ごくわずかな影響力しか持たなかった。その沈黙は、若い日本人女性が教え込まれ続けている、次のような価値観によるものだろう。
「日本で女の子たちは、沈黙こそが、忍耐することと不平を言わないこととを示す、一つの美点であると教えられます」と、#StandUpJapan の共同創設者の高橋亜咲さんと辻岡涼さんは指摘する。
「私たちは抗議しないよう、心理的に操作されます。私たちを憤慨させる振る舞いに対してさえもです。付け加えていうと、私たちは中学校や高校で十分な性教育を受けていません。それこそが、たくさんの女性たちが性差別に対してなすすべを知らないでいる理由なのです」
この沈黙は、最も極端な事件の場合にも克服しがたいように思われる。2017年に政府が実施した調査によると、レイプの被害者で警察に被害を届け出る人の割合は、わずか2.8%であった。勇敢にも声を上げた女性たちは、その勇気ある行動にもかかわらず、敵意すれすれの社会的圧力に直面することになる。高橋さんと辻岡さんは、次のように指摘する。
「ハラスメントあるいは差別を受けていると訴える女の子は、他人の注意を自分に引き付けるのをやめるよう忠告されます。レイプの被害にあった場合でさえ、彼女たちは男性を過度に誘惑したのだと非難されます。それは単に、彼女たちが夕食やお酒の招待を受け入れたという理由からです。それゆえ、人々は沈黙を選ぶのです」
凍りつくような一例が、2015年に現れた。それは、ジャーナリストの伊藤詩織さんが、同業者の男性から夕食の際に飲み物に薬を混ぜられ、男性の滞在するホテルの一室でレイプされたとして、この男性を告発したときのことだ。警察は捜査を始める前にもたつき、そして加害者が性行為は同意の下だったと明言すると、事件はすぐに不起訴となった。伊藤詩織さんは、支援がないことにショックを受けた。この問題は、彼女がレイプの被害者として向き合わなければならないならないものである。中でもとりわけ、メディアは彼女の身に起こったことを報じるのを拒んだ。2017年、彼女は自身の体験を生々しく描いた著書、『BlackBox』を出版した。本を書くことで、彼女はついに事件を白日の下にさらすことができた。しかし、その代償として彼女はまた、洪水のような大量の侮辱と死の脅迫を浴びた。彼女は「Politico」で次のように語った。
「私は「あばずれ」だとか、「売春婦」呼ばわりされ、「死ねばいい」と言われました。私の国籍に関する議論もありました。なぜなら、本当の日本人はこれほど「恥ずかしい」ことを話すことはないだろう(と彼らは考える)からです」

メンタリティを変えること

最近 #VoiceUpJapanと再命名された#StandUpJapanは、現在、順風満帆の勢いで進んでいる。署名を始めてからわずか2週間で、すでに当初の目標の50,000筆を上回る数の署名が集まった。グループの活動や創設者の山本さんの姿は、大新聞の「朝日新聞」からアメリカのテレビ局CNNまで、数多くのメディアで報道された。今回の騒動によって、日本の女性たちは、沈黙を断ち切って日本での性差別と闘う機会を、ついに提供されることになるのだろうか?それこそが、山本さんが少なくともそうであってほしいと望んでいることだ。
「私たちは、「Spa!」の親会社であるフジ・メディア・ホールディングスとの会談の機会を得ることができました。そして私たちは、今回の問題を国会に提出したいと思っています。私たちは、この行動がメディアに私たちの意見を理解させることを可能にし、そしてメディアを媒介として、社会の中での女性の地位に関する、日本人のメンタリティを変えるのを可能にすることを願っています。日本では今年G20が、来年はオリンピックが開催されます。ですから、このような振る舞いはもう許されません。立ち上がれ、日本、今こそ日本の目覚めの時です」(了)

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