「世界の声 伊藤詩織さん」 France2 Télé Matin フランス語動画翻訳

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2019.4.23

男性司会者: 少し難しいテーマを取り上げます。私たちは極めて勇気ある、一人の日本人女性ジャーナリストに敬意を捧げます。そこで、私は言葉を選んで話すことにします。彼女のことを語っていただけますか?

女性司会者: ええ、なぜなら彼女は勇敢にも日本のレイプのタブーを打ち破ったのです。そして、それはまったく例外的なことです。なぜなら被害を報告する日本人女性は、ほとんどいないからです。そして、そのようななかであえて被害を報告する女性は、非常に大きなリスクを冒すことになります。それは彼女や、家族にとって恥ずかしい事とみなされるからです。性暴力の被害に遭った人たちは、「嘘をついている」、「十分に身を守らなかった」、「男を誘惑したのだ」といった風に非難されます。つまり、結果的に被害を受けた彼女たちが悪いとされてしまうのです。もし彼女たちがレイプされたら、被害にあった彼女たちが悪いというのです。

男性司会者: こんなことを言って申し訳ないのですが、わざわざ日本に目を向けなくとも、そのようなことはあちこちで、フランスでもよくあることではないのですか?

女性司会者: 特に日本ではそのような状況があり、それは日本特有のものです。なぜならその上、警察や司法も加害者に対して非常に寛大な態度を見せるからです。いいですか、それはつまり女性たちが発言することはとても大変で、性暴力についてオープンに話すことは難しいということなのです。しかし、声を上げることのできた女性が一人います。それが伊藤詩織さんです。彼女は30歳になるかならないかの若いジャーナリストで、自らのレイプ被害を記者会見で公然と打ち明けました。また彼女は加害者の名前を出すこともしました。実は加害者は国営テレビ局(ママ)の重要人物で、日本の首相に非常に近い人物でした。そしてこのことが事件をより複雑にしました。なぜなら、加害者の逮捕が最後の最後で取りやめになったからです。これからご覧いただくのは、非常に驚くべき証言です。伊藤詩織さんについて、理解していただけると思います。ご覧ください。

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伊藤詩織さん: 日本では性暴力はまったくのタブーでした。性暴力の被害にあったとき、それは恥ずかしいこととみなされるのです。もし法律のシステムがより有効で、社会的な支援もあれば、私が性暴力について話す必要もなかったでしょう。しかし、私は法律や社会のシステムに大きな欠陥があることに気づき、自分がこのことについて話さなければならないと感じたのです。そして私は激しい反発を受けました。私や私の家族も脅迫を受け、私は非常に強い孤独を感じていました。世間の人たちは、なぜ私がこの話をしているのか理解していなかったのです。しかし私はジャーナリズムと真実に対する希望を持っていました。どれだけかかるか、ひょっとすると何十年かかるかわかりませんでしたが、声を上げることで、私のことを誰かに聞きいれてもらえるだろうことは知っていました。
性暴力の被害に遭われた方たちからの、メッセージを受け取りました。そして自身の被害を、ときには何年ものあいだ誰にも話すことができず、また助けを求めることもできなかった人が沢山いることに、ショックを受けました。特に日本ではこのような状況なのです。

通りを歩いていると、たくさんの人たちが、自分の体験を話すために私のところに来てくれます。しかし日本では、そうすることは規則に適った正しいことではないのです。ですから初めの頃は、性暴力は話すことのとても難しい話題だったのです。しかし#MeTooムーブメントが起こったおかげで「ニューヨーク・タイムズ」が私の事件を取り上げてくれ、日本のメディアも多くの場合はそうでした。このように世界中に響き渡る#MeTooの声のおかげで、私は一人ではないと感じることができました。他の多くの被害にあわれた方たちにとっても、それは同じだったと思います。#MeTooのおかげで、私たちは一緒に立ち向かうことができたのです。日本で#MeTooと言うのは危険なことです。ですから私たちは#WeTooと言うことにしました。「私たちも」という意味です。
もうこの問題を無視することはできません。なぜなら次はあなたやあなたの娘、またはあなたの愛する人が、同じ目にあうかもしれないからです。ですから性暴力を止めることは、私たちの問題なのです。もしかすると、それは勇気のいることかもしれません。しかし声を上げること、それは何よりも私たちの基本的で重要な権利なのです。

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男性司会者: ポジティブな側面…、それは、たとえ今のところ何も解決していないのであっても、それでも彼女の話の中には、いくつかのポジティブな面があることです。

女性司会者:彼女が実際に、他の女性たちに話す勇気を与えることができたのは確かです。そしてそれはとても重要なことで、日本のような国での非常に大きな一歩なのです。Picquier社から彼女の著書『Black Box』が出版されています。じつは伊藤詩織さんは今も正義を求め続けています。というのはもちろん、事件はまだ終わったというには程遠いからです。(了)

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