伊藤詩織さん、サイレンス・ブレイカー FEMINA

TEXT by Muriel Chavaillaz 2019.5.13

レイプの被害にあって以来、彼女は日本人の物の見方を変化させるために絶えず闘いつづけている。彼女は、#MeTooから派生した運動である#WeTooムーブメントを日本で起こした。そしてその著書『Black Box』は、今やフランス語に翻訳されている。

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彼女は雑誌『Grazia』でこう語っている。 「もっとも強く印象に残っているのは、私が自身のレイプ被害を公表したことに、世間の人たちがそれ以上に驚いたことです」© Geoff Pugh Shutterstock

伊藤詩織さんとは誰か?

2015年4月3日、伊藤詩織さんの人生は大きく変わってしまう。テレビ局の上層部の人間で、日本の首相に近い人物である山口敬之との会食のとき、彼女は意識を失い、目覚めるとホテルの一室で裸の状態でレイプをされていた。加害者は、彼女は性行為に同意していたと主張し、警察は彼女に被害届を出さないように勧めた。激しい非難や侮辱を受け、家族や友人たちから拒絶されながらも、伊藤詩織さんは正義がなされるよう闘った。彼女は勇敢にも、日本人が自らに禁じている行動をとった。つまり、声を上げたのだ。

なぜ話題になるのか?

彼女は自身の闘いを、今やフランス語に翻訳されている著書、『Black Box』の中で語っている。また、彼女は『Grazia』のインタビューでこう語っている。
「日本ではレイプの被害者は落ち込んで家に閉じこもり、恥ずかしさで沈黙させられているものとみなされます。私はそのすべてに耐えて生き延びることができるよう、闘う必要があったのです」
脅迫から逃れ、彼女は現在ロンドンで暮らしている。しかし、そのような状況でも彼女は女性たちを励まして、沈黙の掟を破ることを促し続けている。ハーヴェイ・ワインスタインの事件の後、彼女は日本で#WeTooムーブメントを作り出した。このハッシュタグは瞬く間に広まり、日本のメディアもようやく性暴力についての取材をし始めた。「日本経済新聞」の調査によると、日本では女性の2人に1人が職場でセクハラにあっており、上司に被害を報告する割合はわずか35%にとどまるという。

他の人たちはどう言っているのか?

フランス人ジャーナリストのミエ・コヒヤマさんは「Libération 」紙のインタビューで、こう指摘している。
「彼女は地獄を味わったのです。彼女は並外れた強さを持っています。私の父は日本人で、私は東京で学び、働いた経験があります。この国のことをよく知っているので、この若い女性にはびっくりさせられました」
闘いを続けることの助けとなっているもの

伊藤詩織さんがレイプの被害を公表したとき、彼女の家族は不安でおびえていた。彼女は『Paris Match』のインタビューでこう語っている。
「一年の間、妹とは話をすることが出来ませんでした。しかし#MeToo が起こってから、性暴力について話すことはそれほど難しいことではなかったことに、妹も気づいたと思います」(了)

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