「日本の#MeTooの象徴、ジャーナリストの伊藤詩織さん、加害者に対する訴訟に勝訴」『マリ・クレール』誌

TEXT by Thilda Riou, Morgane Giuliani 2019.12.18

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彼女は、2015年にテレビ局の支局長からレイプの被害にあったことを(2017年に)打ち明けた。12月18日、東京地裁は、ジャーナリスト伊藤詩織さんの損害賠償請求を認める判決を下した。彼女は著書『Black Box』の中で、日本の性暴力にまつわる沈黙の掟を告発している。

「私たちは勝訴しました」
今週18日水曜日、民事裁判の開かれた裁判所の出口で、伊藤詩織さんはこう表明した。日本の#MeTooムーヴメントの象徴である彼女は、2015年に、当時、アメリカのテレビ局(原文ママ)TBSのワシントン支局長だった男性から、レイプの被害にあったとして、賠償を請求していた。
ル・モンド」紙によると、東京地裁は、加害者とされる男性に対し、彼女の請求額のおよそ3分の1にあたる、330万円(25,000ユーロ)の支払いを命じた。

民事訴訟

「20 minutes」紙によると、伊藤詩織さんは、加害者とされる山口敬之と、彼が伝記を書いている安倍晋三首相との間につながりがあることを主張していたが、刑事事件では不起訴となり、彼女は、民事訴訟を起こすにとどまらなければならなかったという。しかし、このように奔走したために、伊藤詩織さんは、日本を離れてロンドンに移住することを強いられた。#MeTooムーヴメントの影響をほとんど受けておらず、性暴力に関して沈黙が支配する日本で、性被害についてオープンに語った彼女は、侮辱と脅迫、そして攻撃のメッセージの波にのまれた。
「私が身の危険を味わったのは、アジアで最も安全と名高い国の一つ、私の生まれた国、ここ、日本でした」
彼女は「リベラシオン」紙のインタヴューで、そう説明している。

12月18日水曜日、彼女は裁判所の出口で、少なくとも部分的にではあるが、民事裁判に勝訴した(ことを発表した)。
「相手方の訴えは棄却されました。判決の詳細については私たちは知りませんが、これは一つの重要な節目です。私たちはいくつかの証言を提出することができ、それらの証言は民事法廷で聞き入れられました」と、彼女は評価する。

日本の#MeTooの中心的人物

伊藤詩織さんは、自身に起こった出来事を、著書『Black Box』の中で語った。2015年4月3日に、前夜いっしょに酒を飲んだ男性から、ホテルの一室でレイプされたと彼女は主張している。当時、TBSのワシントン支局長だった山口敬之は、性行為は同意の上だったと断言し、現在まで事件を否認している。
「20 minutes」紙の記事の中で伊藤詩織さんが主張するところによると、二人で一緒にレストランに行った際に、加害者とされる男性が、おそらく、彼女の飲み物にドラッグを混ぜたのだろうという。そして、ホテルの一室で目を覚ますと、レイプをされている最中で、その後、逃げ出すことができたという。
リベラシオン」紙によると、警察に被害を打ち明けた時、伊藤詩織さんは、警察官に取り囲まれたなか、床に寝そべり、等身大の人形を体の上にのせられた状態で、事件の再現をさせられたといい、彼女の体験したことは、まるでセカンドレイプだという。同紙のインタヴューで、彼女はこう説明している。
「「密室で起こったことは、第三者には知りえない」と繰り返し言われました。検察官は、この状況を「ブラックボックス」と形容しました」
この民事裁判に続いて、二人は(12月)18日と19日に開かれる、それぞれ別の記者会見で、自分の考えを述べる予定だ。

レイプに関する時代錯誤的な法律

日本ではレイプの被害者は、加害者に対して力の限り抵抗したことを法廷で「証明」しなければならない。被害者の抵抗を著しく困難にするほどの明確な暴行、または脅迫の存在、あるいは被害者が完全に抗拒不能な状態であったことが証明されない限り、レイプは確証されない。たとえ証言や、レイプがあったことを証明する医学検査や、心理分析の結果が出た場合でさえ、さらに、(被害者が)心理的支配下に置かれている場合でさえである。
このように、レイプが蔓延する状況を長引かせている、時代錯誤的な法律が存在することから、この法律に反対して闘う女性活動家や、人権保護運動家の数が、日本国内で次第に増えていっている。今年、日本では、性暴力に関する数多くのデモが開かれた。
自分の娘を13歳のころから19歳のころまで繰り返しレイプしていた父親が、「娘が著しく抵抗できない状況であったとは認められない」という理由で、無罪となった事件が(2019年3月に)あった。事件は現在控訴中であるが、スキャンダルになっていた。そして今年9月、この事件がきっかけとなって、法改正を求める署名運動が生まれた。AFP通信によると、すぐに47,000筆以上の署名が集まったという。
次のことを思い出そう。レイプの被害者の大部分が、被害にあった際に身が固まってしまうことが、心理学で証明されている。これは、死の恐怖から生じる、第一の反射的行動なのである。(了)

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