「日本で、汚名を着せられるフェミニストたち」Slateフランス版 東アジアの#MeToo特集その2

TEXT by Salomé Grouard  2020.7.24

男女平等に関して後退する国の中で、女性たちは社会的圧力と闘うために、前面に立って闘いをリードしなければならない。

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©Charly Triballeau / AFP


2015年、ジャーナリストの伊藤詩織さんは、元記者で安倍晋三首相に近い人物である男性を性的暴行で訴えた。メディアで大きく報じられた4年にわたる闘いの後、山口氏は性的暴行で有罪とはならなかった。ただ賠償金として、裁判所は山口氏に対して、330万円(約27,000ユーロ)の支払いを命じた。そして、彼の暴行は言葉半ばに認められる形となった。
伊藤詩織さんの物語が日本で大きな反響を呼んだのは、彼女が自身のレイプ被害を公の場で証言した、初めての女性たちのうちの一人だからである。そのことが、なぜこの訴訟に対する反響が彼女にとって恐ろしいものであったかを説明してくれる。彼女は、自身の事件に関して日本中が真っ二つに割れるのを見た。半分が彼女を容赦なく中傷すれば、もう半分は、自分を支えるために他の仕方のなかった伊藤さんに一体化した。

非常に根強く定着した家父長制システム

このようにして伊藤詩織さんは、日本の#MeTooムーヴメントのリーダー的存在となり、多くの女性たちに勇気を与えた。男女間の不平等と闘うことは、歴史的、文化的な家父長システムで知られる社会の中で、非常に難しい任務だ。したがって、東京で働く24歳のタニ・アヤカさんが証言するように、フェミニスムによる女性解放は、日本でなかなか花開かない。
「自分がフェミニストであることを声高には言いたくありません。日本では、世間の人たちはフェミニスムのことを、単に注目を集めたいがために不満を述べるヒステリックな人たちと考えているのです。こんな風に、フェミニスムは「社会の調和」を揺るがすものとはみなされないのです」
男女平等の問題は、常にタニさんの日常的な闘いの一部となったが、彼女は、国内でまったく珍しいものではないある状況を打ち明けてくれた。日本でフェミニストとして一体化することは、実に汚名を着せられたレッテルを貼られることを受け入れることを意味し、社会的、職業的なあらゆる生活様式が、ほとんど不可能になってしまうのである。
25歳の会社員、カイヌマ・ナオミさんは、タニさんの意見を認める。
「日本は非常に伝統的な考えに従っています。そして残念なことに、伝統がしばしば、差別を永続させるために使われているのです」

本当の変化の必要

日本では、フェミニスム、あるいは「フェミニズム」は、憎しみとヒステリーとが一体化した用語である。会話の中でこの言葉が現れた場合、座がしらけ、明瞭な不快感、そして不安全さや敵意に会話が包まれる可能性がある。そして、会話に参加する人たちの性別や年齢区分に関係なく、そうなってしまう。
「人々は、このように今日まで機能してきた国で生活してきました。彼らは物事を変化させる必要を理解していないのです」
カイヌマさんは、そう説明する。しかし、この変化の必要は、極めて重要なものとなっている。
2020年3月、19歳の実の娘をレイプしていた父親に、無罪判決が下った。裁判官は、娘が未成年(原注 日本では20歳で成人と定められている)の性暴力被害者であることを認めながらも、娘は父親に対して身体的に抵抗することが可能であったと、論拠を挙げて主張した。
2019年始め、石川優実さんが、職場でのヒール靴着用強制に反対する運動、#KuTooムーヴメントを生み出した。この運動に答えて、根本匠厚生労働大臣は、職場でのヒール靴は「必要かつ適切」であると説明した。
2018年、日本の最高ランクの医科大学が、入試の際に女子学生の数を減らすために点数操作を行っていたことを認めた。大学の代表者たちは、この点数操作は、女性が高いポストに就くことを制限するための「必要悪」であったと説明した。なぜなら、女性は最初の出産後、「必然的に」仕事を辞めるだろうからというのだ。

2018年2月、ある男性の一団が、地下鉄の女性専用車両に乗り込んだ。彼らは、この種の区別は男性に対する逆差別だと説明した。彼らのこのような主張は、カイヌマさんをこれ以上ないほど激しく苛立たせた。
「日本は、地下鉄内での性的暴行の問題に、気がつかないままでいます。私の知り合いの女性たちのほとんどが、そして私も含めてですが、その被害に遭っています」

社会的圧力の強烈さ

2019年、世界経済フォーラムジェンダーギャップ指数で、日本は153か国中121位に位置している。日本は前年よりも11ほど順位を落としている。そして、これらの問題について進歩させることを目指して取られた諸政策にもかかわらず、日本は再び順位を上げるのに、多くの困難を抱えている。すでに2013年には、安倍晋三首相が男女間の不平等を減らすためのキャンペーンを開始していた。
この、「ウーマノミクス」と命名された計画は、働く女性の割合を増やすのを目的としていた。この働きかけに効果が無かったと言っては、嘘になるだろう。なぜなら、働く女性の割合に関するこの指数は、日本で決してこれほど高くなかったからである(原注 2019年には67%)。残念なことに、安倍首相は数字に専心するあまり、極めて重大な点を忘れている。職場での社会的圧力の問題だ。

母親であることを取るか、仕事を取るか

小酒部さやかさんは、現在43歳である。このフェミニスム活動家は、職場で働く子持ちの女性たちに対するハラスメントの問題に身を投じた。彼女自身も、その被害に遭ったからだ。彼女は「MATernity And HARAssment」のアナグラムである、「マタハラ」という言葉を生み出した。数字が、この問題の重要性を理解する助けとなってくれる。日本人女性の70%近くが、第一子の出産後、仕事を辞めている。なぜなら彼女たちは、母親になる、いわゆる「野心的な」女性たちに向けられる、同僚たちや社会からの敵意に直面しなければならないからだ。小酒部さんはこう説明する。
「私は仕事を失いたくないので、上司に妊娠を隠していました。そして、そのときに最初の流産を経験したのです。私は、二度目の妊娠を上司である部長に報告しました。部長は私の自宅にやってきて、辞職を強要してきました。私は仕事を失いたくないので、それでも働き続けました。そして、部長の訪問から一週間後に(二度目の)流産をしたのです」
子供ができても仕事を辞めたくないという女性たちに対する圧力は、日本でとても大きなものである。小酒部さんは語る。
「上司たちは私のことを、母親であることと働くことを同時に望む、強欲な人間だと言っていました。そして彼ら全員が、「全くの好意で」私にとって最善の助言をしていると考えていたのです」
このようなトラウマとなる体験をした後、彼女は「自分の二度の流産に意味を与える」ことを決意する。任務は果たされた。彼女の強いモチヴェーションと行動によって、2017年からマタハラは法律によって罰せられるようになった。

この変革はひょっとすると、日本人のメンタリティが徐々に変化していることの証拠なのかもしれない。しかしカイヌマさんは、この移り変わりは、多くの人たちにとっては困難なままだと説明する。つまり、女性たちがダブルスタンダードの被害者となっているというのだ。女性たちは家庭内でよく働くことを期待され、またそれだけでなく、職場でも完璧であることを期待されているからだ。

それでも日本人女性たちは、先頭に立って闘うという考えを次第に偏見無く受け入れられるようになってきている。そして、「自立した」女性という概念が、次第に社会の中で姿を現し始めている。カイヌマさんは、こう説明する。
「男性たちは「強い」女性たちが存在することを知っています。ただ、彼らがそのような女性を望んでいないだけなのです」

タニさんは、希望に満ちたままでいる。なぜなら彼女は現在、日本の大新聞で性差別主義を告発する記事を読むことができるからだ。5年前にはまだ、このようなことは不可能だったのである。(了)

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