「日本で、性暴力に反対するデモが広がる」La Croix

性暴力に反対する運動の象徴で、月に一度開催されるフラワーデモが、この二年間で日本のすべての都道府県に拡大した。性暴力に関するタブーをなくすこと、そして被害者たちが沈黙から抜け出すことを可能にするのを願って。

TEXT by Yuta Yagishita 2021.4.18

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2019年に東京で開催されたデモにて撮影 ©️ISSEI KATO/REUTERS

 

4月のこの日、東京駅前の広場では、寒さとコロナ禍にもかかわらず、およそ50名の参加者たちが、石田郁子さんのスピーチに注意深く耳を傾けた。石田さんは札幌市内の中学校に通っていたときに、男性教師から学校で性暴力の被害に遭った。事件から20年以上たった2019年、石田さんは男性教師と市を相手取って訴訟を起こした。彼女の訴えは退けられたが、「わたしが性暴力の被害に遭っていた事実は認められ、加害者は免職されました」。石田さんがそう告げると、デモの参加者たちは励ましの声の混じった大きな拍手で応えた。

各地で毎月開催される集会
この、「フラワーデモ」と名付けられた性暴力に反対するデモは、#MeToo以後の日本のフェミニスト運動の象徴である。2019年4月の開催以来、この毎月開催される集会は、全国47都道府県に拡大し、延べ1万3千人が参加した。これは、デモに参加する人はわずかで、長年にわたって性暴力がタブーとみなされていた日本では異例なことだ。
「裁判のあいだ、とても孤独に感じることもありました。でもここではみなさんが優しい言葉でわたしのことを励ましてくれます。それがわたしの心を和らげてくれます」
フラワーデモにほぼ毎回参加する石田さんは、スピーチのなかでそう語ってくれた。
このデモの驚異的な成功を理解するために、われわれは2019年3月へと時計の針を戻さなければならない。2019年3月、4件のレイプ事件に対して無罪判決が下った。そのうち2件は近親姦レイプであった。このような判決が下る原因は、日本の刑法では性的同意が考慮に入れられていないこと、また、被害者の抵抗を無力化する強制または脅迫がなければレイプとはみなされないことなどである。

性被害当事者たちが言葉を発する
憤慨させられた500名以上の女性たちが、2019年4月11日、東京駅前に集結した。会場では予定されたスピーチが終っても、誰も帰ろうとはしなかった。その光景はまるで、あたかもタブーが吹き飛んでしまったかのようであった。そして何名もの参加者たちが、自分たちのこれまで受けてきた性的攻撃やレイプ被害の体験を共有するために発言をした。その様子を見た主催者たちは、翌月も同様の集会を開くことを決めた。これが、フラワーデモ誕生の経緯である。
編集者でフラワーデモ呼びかけ人のひとりである松尾亜紀子さんはこう断言する。
「これまで社会は性被害当事者たちの声を一度も聞いてきませんでした。わたしたちは、当事者たちが話すことのできる場所を作りました。ここでは、たくさんの参加者たちが、これまで一度も話す勇気のもてなかったことを話してくれます。フラワーデモは、性暴力の生の現実を示すことを可能にしたのです」

性的同意の闘い
目白大学心理学部専任講師の齋藤梓さんは、このデモが日本人のメンタリティを変えることに貢献したとして、次のように語る。
「メディアの仕事を通じて、自分が性暴力の被害に遭っていたことに気づく人の数が、次第に増えてきています。同時に、自分も声を上げることができることに気づく当事者たちの数も増加しています」
だが、フェミニストたちの闘いがこれで終ったわけではない。彼女たちは、日本の刑法に同意の概念が銘記されるよう、闘っている。この問題は、現在、法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」で討議されている。しかし検討会のなかには、同意の概念を刑法に盛り込むことに反対するメンバーもいる。フラワーデモに定期的に参加する山本潤さんは、ため息まじりに次のように語った。山本さんは団体「Spring」代表で、法改正検討会のメンバーでもあり、性被害当事者たちのために闘っている。
「同意のない性行為が犯罪とされるかどうか、はっきりしたことはいえない状況です」(了)

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