「遅まきながら、日本の映画界にも#MeTooが上陸した」MADMOIZELLE.COM

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TEXT by Marie Chéreau 2022.5.9
数週間来、これまで性暴力やセクハラに口をつぐんできた日本の映画界に、告発の波が押し寄せた。
2018年にアメリカで勃発したワインスタイン事件が引き金となり、映画業界での身体的暴力と性暴力に対する告発が、世界中で相次いで起こった。
この問題に関して非常に口の堅い日本は、これまで沈黙を保ってきた。しかし、#MeTooが起こってから5年後の今、いくつかの騒動を経て、日本映画界もようやく「#MeToo」と言ったように思われる。

何名もの日本人男性映画監督たちが、自作に出演した女性俳優たちから、性暴力被害を告発された
すべては、2021年3月(原文ママ)に、「週刊文春」が、俳優で映画監督の榊英雄が4人の女性俳優たちに性的関係を強要していたことを暴いたことから始まった。
彼の配偶者で歌手の榊いずみが、公式声明を通じて、4人の被害女性たちに謝罪し、彼と離婚することを表明したが、榊英雄は、4人の女性俳優たちとの性的関係は、同意のもとで持たれたものであったと断言した。その直後、彼の最新作「蜜月」は公開中止となった。この作品は、義父から性暴力被害にあった一人の若い女性がトラウマに苦しむ内容を描いたものだ。
その後、問題は雪玉式にふくれ上がるのだが、この事件はその始まりにすぎなかった…。
それから程なくして、榊の側近で俳優の木下ほうかが、3人の女性俳優からレイプ行為を告発され、「無期限」の活動休止を発表した。
(2022年)4月4日、今度は「愛のむきだし」や「冷たい熱帯魚」(2010年)で知られる人気映画監督の園子温が、複数の女性俳優に、映画の出演と引き換えに性的関係を持つことを要求していたとして告発された。このことは、「週刊女性」が報じた。

日本の映画界も#MeTooを免れない
4月中頃には、日本で最も人気のある女性俳優の一人で、特に「ノルウェーの森」や、5月31日にフランスでも封切られる「あのこは貴族」で知られる水原希子が、「週刊文春」のインタヴューに対してこう語った。
「わたしは男性監督たちから数え切れないほどのセクハラ的な言葉を浴びせられてきました。映画の撮影時にも、いくつもの不愉快な体験をしました」
5月4日、日本の中部地方に位置する愛知県の日刊紙「中日新聞」が、調査の結果を公表し、日本の映画業界に関するセンセーショナルな事実が明らかとなった。
同紙の取材に対して匿名で証言した一人の日本人男性映画監督がそう認めるように、暴力は日本の映画業界のいたるところに存在し、そしてそれは驚くべきことではない。
「ある日、有名な映画監督から、彼の作品についての意見を求められました。わたしは自分の意見を述べました。すると、わたしの答えに激怒した彼は、「お前はなにもわかっていない!」と言って、わたしの顔を殴ったのです」

日本映画界にはびこる沈黙の掟
日本では、映画業界で働く人たちのほとんどが、フリーランスとして働いている。つまり、このことが、優越的な地位にある映画監督たちにとって、思いがけない僥倖となっており、構造的な暴力を助長していると、「映画業界で働く女性を守る会」の代表者である沙織さんは、中日新聞の取材に対して語った。
「問題は監督だけにとどまりません。照明監督や小道具の責任者が、自分たちの部下に対してパワハラや性暴力を犯すことは珍しくありません」
沈黙の掟がひび割れを生ぜしめているこのとき、「万引き家族」でカンヌ国際映画祭最高賞を受賞した是枝裕和を含む6名の映画監督が、公式声明を通じて、業界文化の急進的変化のための主張をした。
「わたしたちは、これまで自分たちが目をつむってきた悪しき慣習を根絶し、すべての俳優、スタッフたちが安全に働くことのできる環境をつくる責任があります。わたしたちは、この目標に達するために必要な行動を考えていきます!」

インディマシー・コーディネーターの導入を義務化すること
俳優の水原希子にとって、打ち出すべき最初の変化で、同時に最も急を要すること、それは、撮影時にインティマシー・コーディネーターを導入することであろう。インティマシー・コーディネーターの仕事は、恋愛シーンの撮影や、またさらにベッドシーンの撮影の際に、俳優たちが安心して演技できる環境が整えられるよう、撮影現場で気を配ることだ。
#MeTooムーヴメント以後、ヨーロッパや北アメリカの映画の撮影現場で、インティマシー・コーディネーターの存在は、次第に増えてきている。しかし日本では、水原希子が「週刊文春」のインタヴューでそう語っているように、インティマシー・コーディネーターは、まだ珍しい存在である。
「今こそ、わたしたちの業界の現実を理解し、必要な変化をもたらすべきときです」
日本で最初のインティマシー・コーディネーターで、アメリカでトレーニングを受けた西村もも子さんと浅田友穂さんは、自分たちの存在がスタジオのなかで「ありふれたもの」となるよう、「毎日新聞」の記事のなかで呼びかけた。
コロナ禍の後、世界中の映画業界が回復の兆しを見せたかに思われる今、前述の暴力事件と性暴力事件は、日本の映画界を一変させた。
「今こそ膿を出し切るべきときです」と、ミニシアター副支配人である坪井篤史さんは、「中日新聞」のインタヴューのなかで語った。
変化への道はきっと長く、困難なものであろう…。世界経済フォーラムが2022年2月に発表した「男女格差指数」で、日本は153カ国中、120位に位置している。
日本での状況は、理想とはほど遠く、勇気を出して被害について語る被害者の数は、それほど多くない。2021年に「日経新聞」が実施した調査によると、質問を受けた女性の42.5%が職場でセクハラに遭っており、そのうち65%が、復讐を恐れて被害を誰にも知らせなかったという。(了)

Au Japon, #MeToo débarque dans l'industrie du cinéma avec du retard - Madmoizelle