日本でゆっくりと広がる#Metooムーヴメント Le Monde紙

TEXT by Philippe Mesmer 2018.4.30

ある財務省高官が女性ジャーナリストに対するセクハラで告発され、辞任した。

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©JIJI PRESS / AFP

一連のセクハラ事件と、それに伴う処罰の数々が、#Metooが日本でも重要性を持ち始めたと考えさせる。ツイッターでは少し騒がれはしたものの、世界経済フォーラムの発表するジェンダーギャップ指数で114位に位置するこの国では、本当の意味での議論はまだ巻き起こっていなかった。
しかし、いくらかの日本人はこの状況を変えることを望んでいる。4月28日に新宿で開催された集会によって証明されるように。
何十人もの男性、女性たちが、セクハラを取り巻く沈黙を告発すること、とりわけ被害者たちに自分の考えを述べることを呼びかけることを望んだ。
1つのハッシュタグがこの機会に作られた。「#私は黙らない0428」である。
「沈黙はあなたを守らない。」
いくつものプラカードやTシャツにこれらの文字が踊った。
事実、セクハラに関するこの沈黙は、掟のように残っている。2015年の警察の統計では、レイプ被害者が自身の被害を打ち明ける割合は4%以下であった。被害者の大部分が何もせず、誰にも言わなかった。
この沈黙は、声を上げることへの恥ずかしさと、告発後の復讐への恐怖に由来する。
たとえばジャーナリストの伊藤詩織さんの場合。彼女は2017年に出版された『Black Box』(文藝春秋、未訳)の中で、2015年に元TBSの記者、山口敬之から受けた暴行事件について語った。山口は安倍首相の側近で、安倍の伝記も書いている。彼はシェラトン都ホテル東京で、無意識状態の彼女を弄んだという。
彼女はその決意、毅然とした態度にも関わらず、加害者とされる男性の有罪を勝ち取ることはできなかった。捜査は開始されたが、山口氏は逮捕されなかった。報道関係者によると、中村格警視庁刑事部長(当時)の介入があったためである。彼は安倍の周辺人物に近い存在でもある。
勇敢に、先頭に立って闘ったことで非難され、脅迫を受けた彼女はイギリスで暮らしている。しかし彼女の悲劇の公開性(主に海外メディアによって報じられた)は、ある程度の効果を持った。
4月28日の集会に参加した一人の女性が、伊藤さんがこの機会のために書いたメッセージを読み上げたのだ。
「想像してください、もしこれがあなたの愛する人や娘だったら。」
「もうこれ以上、こんなことは起こってほしくありません。」
同じく、このムーヴメントが日本で規模を持ち始めた兆候がある。4月27日、20歳の女優、知乃さんが、演出家市原幹也との示談で得た金を演劇、芸能の分野での#Metooグループを作るために使いたいと述べたのだ。
市原は、当時まだ女子高生であった知乃さんに対して取った、不適切な行為を打ち明けた。
「この分野ではどこの会社でも、セクハラや権力の乱用が起こっているのです。」と、彼女は今回の発表の場でも、2017年にネット上で加害者を告発したときにも述べている。
関わりのあるスターたち
社会は反応を示したようだ。電通の有名アートディレクター岸勇希は謝罪を表明し、役職を離れた。人気ブロガーのはあちゅう(本名、伊藤春香さん)に、以前一緒に働いていた際に彼女に対してとったセクハラ行為を告発されたためだ。
スター達も同様に関わりがある。ボーイズバンドTOKIO山口達也は、自宅で未成年の少女にキスをしたことを、テレビの会見で直接謝罪した。彼の契約は全て打ち切られた。
しかし最も不満を残したように思われるのは、福田事務次官の事件である。財務省の最高責任者が、4月18日にセクハラが原因で辞任した。彼はあくまでセクハラを否認した。
彼はテレビ朝日の女性記者にひどい態度を示した、と告発された。『週刊新潮』によって公開された音声記録には、福田と思われる男性が女性記者に対して、「胸を触ってもいいか」、「予算審議が通ったら浮気しよう」などと迫っている様子が記録されている。女性記者は復讐を恐れて名を明かしていない。
この事件は数々の活発な反応を引き起こした。というのも、彼の後見大臣の麻生太郎が、女性記者に罪をなすりつけようとさえまでして、福田を守ったからだ。
「福田を叱った。」と主張しながら、麻生はこの女性記者が高級官吏にハニートラップを仕掛けたと暗示するまでに至った。そしてまた、この種の問題を避けるため、メディアは政府の事柄に関する報道には男性記者を配属すればいいのではないか、と主張するまでに至った。
この政府は、それでもいわゆる「ウーマノミクス」政策を通して、「女性を活躍させる」と主張している。(了)

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