「日本の女性たちは経口中絶薬の処方にパートナーの同意が必要となりそうだ」Slateフランス版
TEXT by Nina Isen 2022.5.31
多くの団体がこのやり方に抗議している。経口中絶薬は、望まない妊娠に終止符を打つ手段として真っ先に挙げられるものだからだ。
薬物による中絶の費用の高さ(約730ユーロ)も、多くの女性人権団体にとって気がかりの種となっている。©Jezael Melgoza
フランスでは1982年に合法化された経口中絶薬だが、「ガーディアン」紙が報じるところによると、日本でも今年末までに解禁される予定だという。だがこの前進の陰には、悲しい現実が隠されている。女性たちが経口妊娠中絶薬を手に入れるためには、パートナー男性の同意が必要となりそうなのだ。
「ガーディアン」紙が強調するように、日本はWHOが是正を勧告しているにも関わらず、女性が妊娠中絶手術を受けるのに第三者の同意を必要とする国の一つで、このように第三者の同意を必要とする国は、世界中で11カ国のみである。
1948年の優生保護法によってまとめ上げられたこの方策は、多くの活動家たちから、女性の生殖の権利を無視するものだと指摘されている。諸団体は、日本の政府と保健当局に対して、自由意思による妊娠中絶(interruption volontaire de grossesse)にアクセスするためにパートナーの同意を必要とするという条件を取り除くよう呼びかけている。
「「パートナー男性の同意」という条件は、男性から同意が得られなかったり、女性が意思に反して出産を強要された場合、問題となります。望まない妊娠状態を強いられるというのは、暴力であり、一種の拷問です」とAction for Safe Abortion Japan創設メンバーの塚原久美さんは語る。
この措置は、過去に悲劇的な事件を生んでいる。「ガーディアン」紙によると、昨年(2021年)、21歳の女性が公園に新生児を遺棄したとして逮捕され、懲役1年の判決を受けた。女性は裁判官に対し、パートナー男性からの同意を受けることができず、中絶をすることができなかったと打ち明けた。
「女性は男性の所有物ではありません。女性の権利は守られなければなりません。なぜ中絶をするのにパートナーの同意が必要なのですか?自分の身体の問題なのに」
二重に受け入れがたい条件
パートナーの同意が必要という条件に加えて問題なのが、薬物による妊娠中絶が健康保険の適用外となりそうなことだ。そのため、その費用は10万円(約730ユーロ)となる見込みだと「ガーディアン」紙は報じている。人権保護諸団体にとってはっきりしていることは、多くの若い女性たちが薬代を払えず、そのため望まない妊娠に至るだろうことである。
「経済的な理由で中絶することができない女性たちもいます。避妊、妊娠、出産、これらすべてが国費によって賄われるべきです」と静岡大学人文社会科学部社会学科の白井千晶教授は語る。
また「ガーディアン」紙が指摘するように、日本では経口避妊薬が認可されるのに40年かかっている。バイアグラの認可には半年しか必要とされなかったにも関わらず。活動家たちによると、これは、「大部分が男性たちによって占められている国会と医師会が、女性の健康に対してほとんど関心をもっていない事実」が反映された結果だという。(了)