『Black Box』フランス語版、書評サイト“Babelio”に寄せられた読者の書評・感想

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©Philippe Picquier

kuroinekoさん 2019.4.10

1989年生まれの伊藤詩織さんは、ジャーナリストになるという夢をかなえるために、型にはまらない国際的な道のりを歩んできた。
しかし2015年春、彼女は、日本の主要テレビ局の局長である男性から、レイプの被害に遭う。彼女は、その男性から飲み物に薬を混ぜられ、眠らされた状態で男性の滞在するホテルの一室へと連れて行かれる。そして目を覚ますと、男性からレイプをされていた。
著書『BlackBox』の中で、伊藤詩織さんは、自身に起こった残虐行為について、また、自身の恥の感情、自分が汚れているという感情、そしてすべてを忘れてしまいたいという感情を率直に語っている。またそれと同時に、この著書は真実を白日の下にさらし、レイプに関する司法を変化させるための、彼女の闘いの証言でもある。彼女の描く、警察、司法機関、医療機関、被害者のための電話相談センターの様子には、読んでいて怖気をふるってしまう。レイプの問題、そして小学生の少女たちが標的となっている、交通機関内での痴漢の問題も、日本ではまだタブーのままであり、だれもこの問題について話そうとはしない。警官たちのほとんどが、告訴をしても無駄だろうといって、彼女に告訴を思いとどまらせようとした。その上、彼女をレイプした男性は著名人で、司法の世界や政界にコネクションを持っていた。
PTSDによる苦しみ、そして、真実への道をふさぐ障壁といった、そのすべての試練にもかかわらず、詩織さんはあきらめなかった。しかし、それにはやはり苦しみが伴う。自分で開き、名前を明かして話をした記者会見――これは大部分の日本人からは、社会的自殺とみなされる行為だ――の後、彼女は妹から口をきいてもらえなくなった。妹の通う高校にまで、会見の影響が及んだからだ(原文ママ)。
私は、伊藤詩織さんが必要とした、信じられない勇気に、非常に感嘆している。自身の受けた暴行被害に向き合うため、またそれだけでなく、日本の人たちに目を向けるべき真実を投げかけるため、そして、日本に存在する無言の順応主義を乗り越えるために彼女が必要とした勇気にである。彼女に求められたエネルギーと努力とを、私は想像することしかできない。
著書の中で、彼女は自身の事件について証言するだけでなく、性犯罪に関する日本の現状にまで話題を広げている。憤り、吐き気を催すような嫌悪感、怒り、共感…。どれもが、私が各章を読み進めながら抱いた感情だ。
したがって、これはとてもつらい読書体験だ。ここに描かれているのは、禅寺の庭や満開の桜といった、美しいイメージとは全く異なる日本の姿だ。しかし、日本について深く学ぼうとすることは、この国の華やかな面とは反対の、暗い側面を発見することでもある。性暴力の問題に関して、日本には進歩しなければならない点が多く残されている。機構や組織の在り方についても、また、日本人のメンタリティーについても同様にである。
ワインスタインの事件があり、#MeTooムーヴメントが世界中いたるところで広がった。このことは、状況を改善させなければならない国が、日本だけではないことを示している。
                 *
clo73 さん 2019.4.29

この本のテーマを知り、読まずにはいられなかった。
これは私にとても関わりのある問題。私たちのうちの多くの人たちにとっても同じように。
これは卑しむべき犯罪で、絶対に告発されなければならないもの…。そして、伊藤詩織さんのように、告発する勇気を持った女性たちがいる。
伊藤詩織さんはジャーナリストで、数年前に自身が経験した出来事について証言している。2015年に、彼女は日本の国営テレビ局(原文ママ)TBSの高い地位にあり、首相に近い人物でもある男性から、飲み物に薬を混ぜられ、レイプされた。その加害者の逮捕は、「上層部からの」電話で、最後の瞬間に取りやめとなった。
著書の中で、彼女はレイプ被害にあってからの苦難の道のりを語り、性犯罪の被害者たちが、守られることも聞き入れられることもない、日本の司法システムと社会システムとを告発している。
「私は、話をすることを恐れているすべての女性たちのために、顔を出して話がしたい。なぜなら、ここ日本では、警察も司法も、性犯罪の被害者たちを支えてくれないからだ。レイプはタブーなのだ」
彼女は勇敢にも、被害について話した!被害について話す女性は、ほとんどいない。というのも、暴力の被害にあったとき、彼女たちは沈黙するからだ。被害について話すのは、慎みが習慣によってぜひとも必要とされるこの国では、特に難しいことなのだ。
「警察署にレイプ事件の告訴をしに行ったとき、警察官から、「ともかく、このようなことはよくあること。捜査をすることはできない」と言われた」
しかし、闘いの中にある伊藤詩織さんは、加害者を告発するため、また特に、法律と日本人のメンタリティーとを変えようとするために、精一杯のことをした。日本では、レイプがあったことを証明するのが非常に難しいことを、知っておかなくてはならない。法律は時代遅れで、110年間改正されていない!
また、裁判のための手続きはないも同然で、被害者を受け入れる、いかなる施設も場所も存在しない。そして、被害にあったとき、必要な情報も、支援も受けられない。司法も警察も病院も、この問題に対して鈍感で、準備ができておらず、このように、性暴力事件をもみ消すことを好む状況があるのだ。
伊藤詩織さんは、闘いをやめなかった。自身の事件が正義によって扱われるために、そして、自身の人生を再建するために。なぜなら、彼女はPTSDに苦しまされており、それが、普通に働くことの妨げとなっているからだ。
事態が前進しないため、彼女は自身の闘いを公にすることを決意する。日本の社会を変えようとして、そして、これらの暴力の被害にあった女性たちを、助けようとして。公然と声を上げることで、彼女は現在、日本の性暴力に関する輿論を動かすことを望んでいる。
「いままで想像もしなかった苦しみがあることを知った。そして、この苦しみと共に生きる人たちが、想像していたよりも数多く存在することを知った。私と同じ経験をした人たち、そして、苦しみの中にある大切な人を支えている人たちに、私はこう伝えたい。「あなたは一人ではない」と」
「誰が子供たちの言うことを聞いてくれる?誰が子供たちのことを守ってくれる?人は変化を望まない。この国では特に、レイプについてオープンに話すことをタブー視する人たちがいる。だが、そのような人たちは、誰を、何から守ろうというのか?」
この著作の中で、彼女は「痴漢」の現象にも言及している。痴漢とは、公共交通機関内での女性に対するハラスメントのことで、特に少女たちが被害にあっている。これは、日本では大きなタブーとなっている、日常的な現実なのである。「痴漢」をする男性は、性的接触によって被害者たちを暴行する捕食者たちである。顔を出して証言して以来、彼女は脅迫の的となり、そのため、日本を離れることを余儀なくされた。
本書を読むことは、仰天させられるような、適切な、そして、知識を与えられる体験である。
『Black Box』は、凍り付くような、必読の物語だ。なぜなら、外国で起こっていることを知るのは、とても重要だからだ…。
この証言を読むことを、強くお勧めする。
                  *
LevoyagedeLolaさん 2019.5.2

伊藤詩織さんは日本人ジャーナリストである。2015年、26歳だった彼女は、アメリカとヨーロッパでの学業を終え、仕事を見つけるために日本に戻った。そして彼女は、日本のテレビ局TBSのワシントン支局長である山口敬之と知り合う(原文ママ)。山口氏は、彼女に仕事のポストを見つけてあげられると請け合った。そして彼は、仕事のポストについて話すため、東京のレストランで落ち合うことを彼女に提案する。その後、伊藤詩織さんは、ホテルの一室のベッドの上で、裸の状態で目を覚ます。山口敬之との性行為の最中だった。彼女にはその夜の記憶がほとんどなく、あるのは、フラッシュのごとく断片的な記憶だけだった。彼女は飲み物に薬を混ぜられ、意識を失った状態でホテルに連れ込まれ、レイプされたのだった。彼女は沈黙しないことを決意し、被害について話し、語り、告訴をした。そして、暴行を全く否定し、彼女は当然性行為に同意していたと断言する山口敬之に、謝罪を要求した。彼女はほとんど支援を得ることができなかったが、それにじっと耐えた。たった一人で。警察から好意的な対応を得ることができなかった彼女は、自身で捜査を行い、証言を集め、証言者に話を聞かなければならなかった。
伊藤詩織さんは、予め著書の冒頭で、この本は単に一人のレイプ被害者の証言にとどまらないと述べている。彼女は、自身の著書が、性暴力の被害者たちを助けるのに役立つことと、被害者たちが、彼女の得ることのできなかった情報と支援とを受け取るのを可能にすることを願っている。彼女は、被害者たちに現実の援助をもたらすこと、性暴力に関する日本人の見方を変化させること、そして、1907年に制定されたままの、日本の法律を変えさせることを望んでいる。
その後、#MeTooが起こり、証言が増え、性暴力についてオープンに話されるようになったが、それはちぐはぐなものだった。日本では、セクハラにあった女性たちの65%近くが被害を報告せず、保守主義と性差別、そして不平等とが続いている。そんな日本は、男女同権に関して、149か国中、110位に位置している。この本は、日本での強姦と準強姦(?!)の扱いに、光を当てるものだ。そして読者は、まだ多くの仕事が残されていることに、気づかされるのである!
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LNさん 2019.5.14

2015年、伊藤詩織さんは当時26歳で、ジャーナリストとして働いていた。ある夜、彼女は、大手テレビ局の局長で、首相に近い人物である山口敬之と、仕事の話をするため、レストランで落ち合った。数時間後、ホテルの一室で目を覚ますと、レイプをされている最中だった。当初、加害者に対する捜査が行われたが、刑事部長で、首相に近い人物でもある男性からの電話で、加害者の逮捕は、結局取りやめになる。理由は告げられていない。当局からの不誠実な対応と、メディアからの沈黙に直面した詩織さんは、自身の事件の捜査を単独で行う。しかしこれまで、彼女は正義を手にしていない。
この冷ややかな証言の書の中で、伊藤詩織さんは、日本での性暴力を次のように告発している。
「私が話したいのは、未来についてだ。そして、どうすればこれ以上自分と同じような被害が生まれなくて済むのか、また、性暴力の被害者たちが支援を受けられるようにするために、何をすればいいのかについてだ。私が過去の話をするのは、ただ未来について考えるために過ぎない」
彼女は、性同意の問題に触れている。密室で、つまり「ブラックボックス」で事件が起こった場合、どうすればいいのか?実際、彼女は自分の過ちにこだわっている。なぜ、すぐに警察に行かなかったのか?そうすれば、事件の証拠になるかもしれない、レイプキットによる検査が受けられたのに。彼女は、ためらいから抜け出すことができなった。それから、加害者は政界にコネクションを持っており、このような人物を訴えたらどうなるのだろうと、様々な疑問が浮かび、そのため、彼女は身動きが取れなかったのだ。
このようにして伊藤詩織さんは、被害者たちをあきらめさせ、沈黙したままにさせる、法律の欠陥と捜査の方法、そして社会の態度とを指弾している。
彼女は、日本の#MeTooムーヴメントの象徴的人物となり、#MeTooは、#WeTooとなった。
その強いモチヴェーションと力により、彼女は、沈黙を好ましいものとする中傷者たちと、勇敢にも闘うことができた。著書の中でも、インタヴューの中でも、彼女は表現を和らげることなく語っている。
「いままで、その存在を想像することさえしなかった苦しみを知った。そして、この苦しみと共に生きる人たちが、想像していたよりも数多く存在することを知った。私と同じ経験をした人たち、そして、苦しみの中にある大切な人を支えている人たちに、私はこう伝えたい。「あなたは一人ではない」と」
                 *
Ichirin-No-Hanaさん 2019.8.25

自伝的な物語である著書『Black Box』の中で、日本人女性ジャーナリストの伊藤詩織さんは、自身の受けたレイプ被害を認めさせるための、闘いの道のりを語っている。
2015年、世界中で活躍するレポーターになることを夢見ていた伊藤詩織さんは、主要テレビ局の局長である男性から、飲み物に薬を混ぜられ、レイプされた。
強い女性である彼女は、真実を白日の下にさらし、性暴力の問題に関する日本の司法を前進させるために立ち上がり、自身の恥の感情と闘うことができた。
彼女は、自分が通り抜けなければならなかった段階を、詳細に、そして率直に私たちに示してくれている。各所で彼女の受けた仕打ちを見て、そして、警察や病院の配慮のなさを目の当たりにし、ただ身を震わすばかりである。時折難しい個所もあるが、『Black Box』は教訓的で、小説のような物語だ。伊藤詩織さんには、ただ感嘆するのみである。彼女はトラウマを味わいながらも、状況を前進させようとし、体面を保とうとする日本社会のなかで、勇敢にもスポークスマンとしてふるまっている。
                  *
AlineMariePさん 2019.12.10

日本ではすべてが美しく、詩情に富んでいるわけではない。女性たちは社会の中で成功するために戦い、多くの不平等に直面し、場違いな行為の標的となっている。そして、強姦や準強姦(なんと不当な用語!)の被害にあっている女性たちも存在し、彼女たちを傷つけて甘い汁を吸う、汚くて憎むべき○○な(ここに皆さんのお好みの罵り言葉を入れてください)者たちのせいで、性暴力の被害を受けることは、被害者たちの恥だとみなされてしまう。
これは、このような女性たちのうちの、一人の女性の証言である。彼女は幸運にも、友人たちから支えられ、自身の事件を、社会的な問題に押し上げることができた。
伊藤詩織さんは、読者が面食らうような証言を届けてくれた。加害者の狭量で卑しい行動や、司法システムの不誠実さに直面した読者は憤慨するが、その読者に潜む怒りとは対照的に、レイプや司法の結果に関する著者の描写は正確で、あるいは臨床的と言ってもいいほどだ。
これは、読まれるべき物語だ。被害者が話すときに、周囲の人間が、「ああ、でもそれはこうではないのですか…」と、もう決して言わない(または考えない)ために!そして、もう決して被害者たちが沈黙しないために!
                  *
Justinatorさん 2019.12.30

男どもはクズ。この本はそのことを改めて証明しているに過ぎない。
胸が悪くなるようだ。男が――この場合は周囲に影響力を持った男性だが――女性をレイプした後、どのように切り抜けるかを見ていると。
吐き気がする。組織が目をつむり、レイプ犯たちに有罪の判決を下さないのを見ていると。
そして、眉をひそめてしまう。被害にあった女性たちが、どのように扱われるかを読んでいると。
世の中もシステムも腐ってる。物事が変化するため、私たちは闘いを続けなければならない。
                  *
Prudenceさん 2020.1.1

ジャーナリストの伊藤詩織さんは、自身の事件の捜査を率先して行った。
彼女は、大手テレビ局の局長である男性から、飲み物に薬を混ぜられ、レイプされたのだった。
彼女は自身の道のりを、事件以前の物語から始めることで、細かく語っている。なぜなら彼女の人生は、レイプの被害にあったということだけで要約されてしまうものではないからだ。例えば彼女は働き者で、多くの言語を操り、ジャーナリストで、強くて、友達も家族もいる。彼女は「被害者A」などではなく、全く例外的な人物なのである。
彼女は自身の事件の捜査をし、事件をもみ消して犯人を守るためのいくつかの試みを、白日の下にさらした。また彼女は、日本のほかの被害者たちについても、またさらに、心配されなければならないであろういくつもの事柄についても、私たちに語ってくれている。その事柄とは、司法について、被害者の受け入れ態勢について、教育や健康について、そして、暴行を受けた後に被害者たちに相次いで起こりうる出来事についてである。そして、被害者たちが適切に受け入れられ、寄り添われ、助けられること、また、被害者たちが、不適切な受け入れによって二次被害による心の傷を負う可能性についても、彼女は語ってくれている。
性暴力や日本に(あるいは単に日本に)興味がある人たちには、特に、日本の司法システムや性差別主義に関心がある人たちにとっては、興味深い本である。
                  *
Alien1610さん 2020.5.24

興味深く読んだ。物語は感動的で、見るに耐えない思いをする場面もあるが、人の心を捉えるものだ。この証言は、日本の暗い側面を示すもので、私たちはその暗い側面にぶつかることになる。私は、このように自分の経験と闘いとを語った、このジャーナリストのことを、とても強い女性だと思う。そして、彼女が裁判に勝ったことを知り、とても嬉しかった。
何枚かのハンカチと、たくさんの心の準備をして、本書を読むことをおススメする。(了)

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日本: #フラワーデモ、レイプ犯たちではなく、被害者たちを守ること TV5MONDE

TEXT by Terriennes, Liliane Charrier 2019.9.11

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日本で、性暴力の被害者たちが声を上げた。東京や他のいくつもの都市でこの半年来開かれている集会で、公衆の面前で証言するために。そしてデモの参加者たちは、時代錯誤的で被害者たちに不利な内容の日本の刑法の改正を求めている。
ある男性が、実の娘を、娘が13歳から19歳のときに渡ってレイプしていた。男性は娘が抵抗した際、暴力を用いて娘をレイプしていた。そして裁判の結果、「全ての性的関係」は娘の「意思に反して」持たれており、娘は父であるこの男性からの繰り返しの暴力により心理的支配下に置かれていたことが、判決により結論付けられた。しかし、それにもかかわらず、加害者であるこの父親に対して、いかなる実刑も下されていない…。
というのも日本では、法的に、激しい暴行や脅迫の存在が証明されるか、または被害者がまったく抵抗できない状態であったことが証明されることが求められるからだ。したがってこの場合、被害者の抵抗を上回る暴力があったにもかかわらず、レイプ被害から逃れるために全力で抵抗したことを証明しなければならないのは、被害者である娘の方なのである。

時代遅れの法律

この判決は控訴された。しかし事件はスキャンダルとなり、この水曜日、日本中で数百名の人たちがデモを行う。毎月11日にそうしているのと同じように。参加者たちは、実の娘を何年ものあいだレイプしていた男性が、有罪と認められていたにもかかわらず自由の身のままであることを許す「時代遅れの」法律のために、憤激させられている。
(6月の)集会の際に掲げられたプラカードの一つには、こう要約されていた。「法律は被害者たちを守らなければならない。加害者たちではなく」


法改正を求めるオンライン署名には、4万7千筆以上の署名が集まった。
13歳から20歳の頃にかけて実の父親から性暴力の被害にあっていた山本潤さんにとって、この司法の判断は、悲しいことに、いつものことであった。
「また始まった!」
45歳の看護師で、性暴力被害者たちの権利のために闘う彼女は言う。
「日本の司法は、今回のような事件を、性暴力犯罪とみなさないのです。もうこれ以上、こんなことを容認することはできません」

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「人は、信頼できると思っていた人から不意に襲われたとき、身体が固まってしまい、ショック状態に陥り、身を守ることができなくなってしまいます」山本潤

「人は、信頼できると思っていた人から不意に襲われたとき、身体が固まってしまい、ショック状態に陥り、身を守ることができなくなってしまいます」と山本潤さんは説明する。そして、怒りで声を震わせながら、彼女はこう続ける。
「父親が実の娘をレイプした場合でさえ、裁判所は、娘は抵抗できただろうと言い、加害者を自由の身のままにしておきます。この法的な状況は、本当に重大な問題なのです」

家父長制的な、法的遺産

角田由紀子弁護士は、こう強調する。
「1907年に刑法が制定された頃、日本は極めて家父長制的な社会でした…。当時レイプは、既婚女性が夫以外の男性の子供を身ごもらないだろうことと、夫以外の他のいかなる男性も、その既婚女性と性的関係を持つことができないだろうことを確認する目的で、重罪とされていました…。つまりこの法律は、夫、あるいは家父長のみに仕える、女性の貞操にまつわる法律だったのです。レイプ犯からほんの数回殴られただけで、いとも簡単にレイプ犯が思いを果たすままにさせておく女性を、誰が守りたいというでしょうか?(訳注:おそらく『注釈刑法』1965年版の次の一節を指す。「些細な暴行・脅迫の前にたやすく屈する貞操の如きは本条によつて保護されるに値しない」 )
このような社会通念のもとに、当時の刑法は制定されたのです」
角田由紀子弁護士にとって、性差別主義は日本の法システムの根深いところに定着しており、その性差別主義が、女性の権利をいつも無価値なものの位置に押し戻しているように見える。そして彼女によると、このことが、世界経済フォーラムの最新(2018年)のジェンダーギャップ指数で、日本が149カ国中110位に位置している理由なのだという。

安全な国、本当に?

2017年、日本は110年間で初めて、性暴力に関する刑法の条項を改正した。そして、男性も被害者として認められるようになり、レイプの最低量刑も在来の3年から5年に延長された。
しかし、改正当時に専門家たちから抗議があったにもかかわらず、(被害にあったとき)抗拒不能であったことを被害者自身が証明しなければならないという要件は、法律の中にしっかりと根を下ろしたままだ。性暴力に関する刑法改正の審議は来年(2020年)再開されるが、この点が取り上げられるかどうかは、定かではない。
刑法改正のための署名の際に示された要求の中で、被害にあったとき身を守ることができなかったことの「証拠の要求」の放棄というのが、「要求の中で最も多くの支持を集めたものだった」と法務省の責任者の男性は説明する。そしてこの責任者は、「我々はこのことを本気で受け止め、真剣に考慮しています」と語った。
さしあたって、#MeTooムーヴメントが大きな勢いを得ていない日本ではあるが、その日本でも、性暴力被害者たちを守ることを望む人たちの声が、少しづつではあるが、次第に以前よりも多く聞かれるようになっている。そして毎月11日、彼らは国内の20の都市で、デモを開くことを予定している。手に花を持って。

「世界で最も安全な国の一つとして名高いこの日本で、私は3歳のときから性暴力の被害にあっていました。私はこの暴力に慣れざるをえなく、そして、それとともに生きていくことを学ばなくてはなりませんでした」
これらの集会のうちの一つの会場(東京駅前)で、28歳の後藤稚菜さんは、デモの参加者たちに向かって、震える声でこう叫んだ。
世界で最も安全な国の一つである日本…。しかし、すべての女性たちにとってそうというわけではないのだ。(了)

 
(動画の訳)

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(キャプション )2019年6月11日、東京
(ナレーション)大勢の女性たち、いくらかの男性たち、いくつもの花、そしてスローガン…。

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「フラワーデモ」と命名された集会が開催された。そしてこの集会で、性暴力の被害者たちが、自分たちの受けてきた被害について、オープンに語った。3歳の頃に性暴力の被害にあった、稚菜さんのような被害者たちがである。

 

後藤稚菜さん「私にとってこのデモは、私たちの経験を共有することのできる場所です。そしてここで語られた体験談は、私たちがハラスメントや暴力の被害者であったことを、はっきりと示していました」

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4月以来、毎月11日にいくつもの支援デモが組織され、多くの証言が公然と解き放たれている。
東京から始まったこの運動は、まだ遠慮がちで大人しいものだが、日本のその他のいくつもの都市に広がった。

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この運動は、ハラスメントや性暴力の問題についての発言が、伝統の重圧や、時代遅れで実情に合わない法的システムによってかき消されたままであったこの国で、前例のないものである。
運動は、実の娘をレイプしていた男性に無罪判決が下るといった、この数ヶ月間でのいくつもの司法の判断が原因となって生れた。

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性暴力被害者たちの権利を守るために闘う山本潤さんは、怒りが冷めやらない様子でこう語る。
「父親である男性が娘をレイプした場合でさえ、裁判所は、娘は抵抗できただろうと判断した上で、加害者を自由の身のままにしておくのです」
人権保護活動家たちが問題視するように、日本の法律では、激しい暴力や脅迫が用いられたことの証拠や、被害者がまったく抵抗できない状態であったことを証明することが求められる。つまり、原告女性は、加害者から逃れるために全力で抵抗したことを証明しなければならないのだ。

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活動家たちが、この法律の改正を求めるオンライン署名を呼び掛けた。この改正の呼び掛けでは、性的同意の概念の定義と、13歳未満の未成年者に対する性行為を即座にレイプと認めることが、まず第一にあげられている。
そして今のところ、4万7千筆の署名が集まっている。

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いくつもの新たな集会が、今日、日本中で予定されている。(了)

information.tv5monde.com

伊藤詩織さんの肖像――日本でのレイプにまつわる社会の壁を打ち破った日本人女性 FuransuJapon

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TEXT by Benjamin Cabiron 2019.5.19

たとえ日本は世界的技術の最先端を走っているにせよ、その社会は相変わらず保守的で、多くの側面について感じやすいままだ。輿論においてであれ、法律の分野においてであれ、日本はレイプとその一般的扱いに関して、西欧社会と比べて大きく遅れている。2年以来、一人の女性が性暴力、転じてレイプに対して断固とした闘いを続けている。そして彼女は、日本社会での断固たる、そして革命的なこの闘いの象徴的人物となった。これは、日本の自覚を呼び覚まそうとする女性ジャーナリスト、伊藤詩織さんの感動的な物語である。

驚くべき道のり

1989年生まれの伊藤詩織さんは、ニューヨークの大学を卒業した日本人女性ジャーナリストだ。当時、彼女はよく知られた通信社、ロイター通信のためのいくつもの仕事を、アメリカと日本との間でこなした(原文ママ)。アメリカでの学業を終えた後、彼女はジャーナリストとして働くために日本に戻った。彼女は当時26歳で、その先には輝かしい未来が待ち受けていた。
しかしすぐに、ある暗く悲惨な事件によって、彼女の人生は大きく変わってしまう。日本に戻った彼女は、日本のテレビ局の責任者の男性から、ある提案を受ける。この男性は「仕事の提案」について話をするため、まず彼女をレストランに招待した。その時彼女は、自分の経歴をステップアップさせ、尊敬できて力のある組織に入るチャンスをつかんだと思っていた。
食事が供され、何杯かの日本酒を飲んだが、そのあとのことを彼女は何も覚えていない。彼女は知らないホテルの一室で意識を取り戻し、気づくと加害者が彼女の上に覆いかぶさっていた。分析家たちは、彼女がグラスの中に「デイト・レイプ・ドラッグ」を混ぜられたのではないかと疑っている。「デイト・レイプ・ドラッグ」とはすなわち、ガンマヒドロキシ酪酸(l’acide gammahydroxybutyrique)のことで、このドラッグはGHBの略称でより知られている。この合成ドラッグは最初、医療の中でナルコレプシー(居眠り病)のようないくつかの病理学を扱うため、あるいは手術前の麻酔薬として用いられていた。しかしこのドラッグの鎮静剤としての特徴は、およそ20年来、レイプ犯たちによって利用されている。そのことからこのドラッグには「デイト・レイプ・ドラッグ」という不吉な呼び名が付けられている。被害者たちにとって不幸なことに、このドラッグを経口摂取することは非常に容易である。それは、このGHBは液状でプラスチック(またはガラス)の小壜に保管して持ち運ぶことが可能で、また被害者のグラスに苦も無く混入させることができるからだ。
伊藤詩織さんの事件に話を戻すと、捜査員たちは、この種のドラッグの使用を推論することしかできなかった。つまり症状は奇妙にも似通っていて、この種の中毒についての医学的な証拠を与えることはできないというのだ。実際、この種の物質は血中に非常にすぐ消えてしまうといい、数時間もあれば(血中に)完全に溶けてしまう。反抗することも身を守ることもできずにレイプの被害にあった後、彼女は加害者から次のような凍り付くような言葉を囁かれた。
「君は合格だよ」
「パンツくらいお土産にさせてよ」
彼女は自分の覚えていることすべてを、AFPへのインタヴューで語った。

すぐに彼女は、自宅の最寄りの警察署に事件を告訴しに行くことで対処を試みる。警察署で刑事はすぐに、彼女のジャーナリストとしての経歴が傷つくのを避けるため、彼女に告訴しないように勧めた。それから刑事は、このようなことは日本で沢山あることだと説明した。この刑事の言うことは全くの間違いではないが、事件の重大性に対して、まったく言い訳になっていない。事実は不幸にも政治的なものであった。なぜなら加害者は権力に近い人物で、多くの日本の行政府のメンバーに、巨大な影響力を持っていたからだ。加害者の山口敬之は、彼女は性行為の間中同意しており、その行為はレイプではなかったと相変わらず主張した。彼は日本で非常に力があり、また現在の日本の首相とも近い人物であるため、まったく捜査を受けなかった。テレビ局TBSの記者で、安倍晋三首相の伝記作家である加害者とされる男性の主張が正しいとされ、伊藤さんの訴えはすぐに不起訴となった。

たゆまぬ、そして断固たる闘い

それでも彼女は闘いを止めず、訴えを開始した。そしてその結果、捜査が開始された。しかし加害者は司法捜査を受けず、彼に対する逮捕状は警察の上層部によって、すぐに取り消された。そして、当局は事件をもみ消し、あまりうまくないやり方で事件を解決済みにすることで、この事件を忘れさせようとした。
状況は2017年末に急速に悪化する、気の毒な伊藤詩織さんが、被害者としてさえ扱われなかったからだ。またさらに悪いことに、まるで彼女に罪があるかのようにみなされもした。というのも、日本の行政府のただなかに広がったスキャンダルの原因が、彼女にあるというのだ。そして彼女の父親までもが、なぜもっと自分の身を守らなかったのかと、彼女を責めるまでに至った。
要するに、彼女はすぐに、祖国で自分が嫌われ者の立場にいることに気づく。そして同時に、日本(のメディア業界)からは、いかなる仕事も提示することを拒まれた。会社や企業が、力のある彼女の加害者の影響力を受けていたり、彼女のような、社会的スキャンダルに関して責任のある人物を採用することを恐れたりしたためだ。現在、ジャーナリスト兼ドキュメンタリー作家としてロンドンで活動する伊藤詩織さんは、挫けるどころか、移住先のロンドンから、日本社会と、そこで行われている文字通りの腐敗と闘っている。
彼女はロンドンから、日常生活の中で裁きを受けている、非常に多くの日本のレイプ被害者たちの声を聴かせるための闘いに身を捧げることを決意した。彼女は非常に精力的な社会的活動に取り掛かった。そして、数多くのインタヴューをこなし、またさらにいくつかの記者会見を開くことで、発言の機会を増やした。記者会見の場で、彼女は日本の被害者たちが感じていること、そして社会や(病院や警察といった)機構や組織の、この種の仮定のケースの扱い方、またさらに、レイプの被害にあった女性がモーニングアフターピルを手に入れようとするときや、中絶をするための、また単純に、告訴をするための奔走のなかで起こる数多くの問題について、できる限り説明することに専心した。

#WeTooムーヴメント

おそらくみなさんご存じのことだと思うが、2006年に Tarana Burkeさんは、性暴力の被害者たち、より正確に言うと、恵まれない地区の被害者たちを支援するための、彼女の最初の運動を始めた。今日、#MeTooムーヴメントは世界中に広がり、2017年10月5日にハリウッドの映画業界を巻き添えにしたワインスタインの事件によって再燃した。現在、このハッシュタグのもとに集まった女性たちの証言の総数は、信じられないほど多いものになり、それにより、世界中の市民たちの意識が揺さぶられた。これは、世界中の非常に異なる様々な社会で起こったセクシャルハラスメントについての真の自覚であり、運動は大きな成功を収めた。
同様の観点で、伊藤詩織さんは#WeTooを創設することにした。これは、国際的社会運動#MeTooに相当する日本の言葉だ。日本は当初、この新しい運動に対して聞く耳を持たなかった。この種の発議に反対する保守的な人物たちや、復讐を恐れる女性たちがいたためだ。伊藤さんによると、司法も警察も性暴力の被害者たちを支援してくれず、状況は現在も未だ複雑なままだという。
彼女の意見によると、効果的な変化が起こるために、日本の司法システムを全体性において変え、また、日本に住む人たちのメンタリティーを変化させたほうがいいという。社会において被害者たちは、そのような存在、つまり、トラウマになるような暴行を受けた人たちであろうとは認識されない。さらに悪いことに、世間の人たちはほとんどの場合、伊藤さんが一般大衆の前で明かしたショッキングな言葉よりはむしろ、彼女がこの種のタブーとなっているであろう話題について公然と発言したことに、より衝撃を受けたのである。一般に、彼女はこのスキャンダルのあいだ、彼女を指弾する内容のメッセージを受け取っていた。そのメッセージとは、なぜ最初彼女は加害者と酒を飲むことを受け入れたのか、またさらに、なぜ反抗し身を守ることができなかったのかと尋ねる内容のものだった。世間の人たちは、彼女が知らないうちにドラッグを摂取させられたという事件の詳細と内容とを知っていた。しかし全体として、彼女の同胞たちは耳を塞いだままでいた。

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日本中を震撼させる闘い

事件が起こったのは2015年4月だが、実際に事態が動き始めたのは、事件をメディアにのせることによって新しい展開を得た、2017年4月のことであった。最初の記者会見を通して、彼女はあらゆる手段を使って彼女に告訴をあきらめさせようとしていた警察の、臆病な態度を告発した。警官たちから受けさせられたレイプの場面の再現もトラウマとなるもので、おそらく彼女を傷つけさせようとするものであった。このレイプの場面の再現は、事件の全体を通して、不健全で衝撃的なものを表象している。記者会見の数か月後、2017年10月に、彼女は『Black Box』と題する物語を出版した。著作はフランスでも出版され、ほかのいくつもの国でも翻訳されている。(著書の中で)彼女は、社会の無理解について語っている。それは、近しい人たちや司法、そして(警察や病院といった)日本の機構や組織に関してであったり、またさらに、彼女が事件を社会の前面に押し出して以来、大量に送られてきたヘイトメッセージや死の脅迫のメッセージについてであったりする。
幸運なことに、彼女の活動はいくつかの成功を見た。彼女の闘いは、レイプに関する日本の法律の改正を可能にした。そして数多くの反響が世界中で、また日本の社会を通しても同様に聞かれた。いくつもの証言が生まれ、たくさんの支援者たちが現れたのだ。また彼女はその著作で、2018年に自由報道協会賞を受賞した。さらに現在彼女は、カルヴァン・クラインのアジアの女性たちに捧げられたキャンペーンの一環として、このブランドのイメージキャラクターとなった。しかし、これらの小さな勝利を得た後でさえ、彼女は、日本の法律は常に、あまりにも多くの制限を受けていると考えている。そしてレイプの被害者たち、より一般に、性的暴行の被害者たちのための保護プログラムが存在しないことを、彼女は残念に思っている。

日本社会を改革すること

日本の司法の無為によって、数多くの問題に光が当てられ、そしてこれらの問題はますます悪く言われている。それでも日本の司法システムは、「容疑者に対して「No」という意思が明確に表現され、聞かれる」ことを、ぜひとも必要としている。しかしスウェーデンで行われた調査では、レイプの被害者たちの70%以上が、加害者に抵抗できないことが証明されている。精神的、肉体的に麻痺状態になるためだ。伊藤さんの事件の場合、状況はもっとひどい。麻酔効果があり、体を麻痺させるドラッグの使用があったからだ。日本の文化では、苦しみのうちに沈黙することは高貴なことだとみなされる。2017年に日本政府によって実施された調査よると、司法の前で証言するレイプ被害者の割合は、せいぜい4%強だという。それはつまり、性暴力の被害を訴えることは、文字通りのタブーだということだ。そして、被害者の圧倒的多数は女性である。
しかし、伊藤さんが被害について明かしたことで、変化への道が開かれた。以前は、日本のテレビのスタジオで、「レイプ」という言葉が使われるのは非常に稀だったが、今は使われるようになり、それが以前とは変わった点だと彼女は説明する。ここで私たちは、財務省高官を巻き添えにしたセクハラ事件を例に引くことができる。この高官は、2018年4月に辞職しなければならなかった。この事件はメディアで大きく報じられた。そして事件が大きく報じられたことは、この事件から生じた、社会の変化の兆しの結果とみなすことができる。

2019年夏に伊藤詩織さんは日本に戻り、加害者と(法廷で)再会する。刑事事件は公式に終ってしまったが、民事では係争中だ。残念ながら、彼女に永久に傷跡を残した加害者を有罪にさせるチャンスは、ほとんどない。さらに、加害者は彼女に名誉棄損で100万ドルの賠償金を要求し、趨勢をひっくり返そうとしている。
現在ロンドンに住む伊藤詩織さんは、いつの日か祖国に戻って暮らすことを望んでいる…。(了)

furansujapon.com

レイプされ、否認される。伊藤詩織さんの二重の苦しみ AFP通信

TEXT by Loïc Bennin 2019.5.19

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2019年4月16日、パリでAFP通信の取材に応じる伊藤詩織さん。©Thomas SAMSON

「私の家族、私の国、そして私の仕事」…勇敢にも加害者を告発し、硬直化した日本社会に立ち向かったことで、伊藤詩織さんはそのすべてを失った。今ではフランス語に翻訳されている著書の中で、彼女は自身の闘いを語っている。性暴力について口をつぐむことを選ぶ国で、社会的自殺を意味する彼女の闘いを。

2015年4月の始め、当時26歳で学業を終えて働き始めたばかりの伊藤詩織さんは、日本のテレビ局の責任者の男性から、仕事のオファーについて話をするため食事に誘われた。このとき彼女は自分の運を信じていた。彼女は酒を飲んだことは覚えているが、そこからホテルの一室で目覚めるまでの記憶が欠落している。そして目覚めたとき、加害者が彼女の上におい被さっていた。これらの症状は、知らない間にグラスに入れられたであろう「デートレイプドラッグ」の影響をはっきりと示しているが、そのことを医学的に証明することは一切できなかった。この類のドラッグはすぐに体外に排出され、血液中に残らないからだ。行為を終えた後、加害者は「君は合格だよ」と言い、そして、「パンツぐらいおみやげにさせてよ」と言ったと、彼女は私たちとのインタビューで語った。「このような事件はよくあること」東京の警察署の捜査員は、彼女に被害届を出さないように勧めて、こう反駁した。被害届を出せば、彼女のジャーナリストとしてのキャリアが 「台無し」になるだろうというのだ。加害者は権力に近く、影響力のある人間だと彼女は繰返し聞かされた。彼女の説明によると、最終的に捜査は開始されたが、容疑者の逮捕状は警察組織のトップの人間の手により、最後の最後で無効となったという。裁判所はこれ以上彼女に取り合ってはくれない。事件は不起訴となっており、事件を否認するこの加害者は一度も訴追されていないからだ。世間の人たちは伊藤詩織さんを「被害者」として認めない。そして、彼女にも咎められるべき点があるとみなしている。彼女の父親までもが、「なぜお前は加害者に対してもっと怒りを持たないのか」と彼女を非難したという。生まれ育った日本で抑圧され、のけ者にされ、もはや仕事を見つけるためのいかなる可能性もなくなった彼女はロンドンに移住し、現在はその地で、ジャーナリスト兼ドキュメンタリー映画監督として働いている。「レイプ被害の後に起こったことに、私はまったく打ちのめされてしまいました」彼女はそう要約する。

社会的自殺

伊藤詩織さんは闘った。「彼らからは、それは不可能だと言われました。しかし結局、それは可能だったのです」これが彼女が著書の中で語っている闘いである。この著作はすでに日本と韓国で出版されており、スウェーデン語にも翻訳される予定だ。そして今日、『Black Box』のタイトルでフランス語に翻訳されている。「担当の検察官からは、「これは密室で起きた出来事で、ブラックボックスなのだ」と説明された。私はこのブラックボックスを解明することにすべての力を注いだ。しかし、このブラック・ボックスを開けようとすればするほど、捜査の過程や日本の司法システムの中に、いくつもの新たなブラックボックスが入り組んだ形で存在することに、私は気づいた」彼女はそう記している。日本の司法システムでは、「拒否の意思が被疑者に明確に伝わったかどうか」が(裁判の際に)他の国に増して求められる。しかし、スウェーデンでのある調査では、レイプ被害者の70%が(恐怖で)動けなくなってしまい、加害者に抵抗できなくなることがわかっている。そしてドラッグが使われた場合、被害者が抵抗できなくなる可能性はさらに高まる。司法が動いてくれない現状を前にして、「事態を前進させるための唯一の方法は、自分の経験してきたことを公表することでした」伊藤詩織さんはそう語る。彼女は2017年5月29日に記者会見を開き、同年10月に著書を出版した。「私は沢山の侮辱や脅迫を受けました。しかし、最もショックを受けたのは女性たちからの手紙でした。それは丁寧な言い方ではありましたが、私が被害を明かしたことがどれほど恥ずかしいことで、もしそれが本当だったとしても、そのように振舞うべきではなかったという内容のものでした」彼女はこう説明する。「日本の文化では、沈黙のうちに苦しむことは気高いことだとみなされるのです」このことは次の事実によって説明される。2017年に実施された日本政府の調査によると、警察に被害を報告するレイプ被害者の割合はわずか2.8%でしかないからだ。沈黙の掟を破ることは、伊藤詩織さんにとって社会的自殺を意味した。こみ上げてくる感情から、かすれてか細くなった声で、彼女は自身が失ったものを並べた。「私は祖国、仕事、そして家族を失いました。しかし、誰かがそれをしなければならなかったのです」

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©Thomas SAMSON

生きる権利

彼女の告発と、それと同時期に起こった#MeTooムーブメントによって、変化の道が開かれた。「少なくとも今ではそのことについて話されますが、以前は日本で「レイプ」という言葉を口にすることはほとんど不可能だったのです」彼女はこう考える。例えば2018年4月に日本の財務省高官によるセクハラ事件が起こり、この高官は辞職しなければならなかった。この国では珍しいことに、この事件はメディアで大きく取り上げられた。しかし、被害者たちは常に社会から排斥されている。「世間の人たちは、被害者は笑顔を見せるものではなく、泣いていなければならないといった、型にはまった物の見方を常に持っています。私は記者会見のときに、リクルートスーツを着ていくよう言われました。しかし、私は嫌だと言いました。なぜなら、被害者のための服装など存在しないからです」そのことを証明するために、伊藤詩織さんはCalvin Kleinのコマーシャル・ビデオの撮影を承諾した。高潔で慎しみ深い映像の中、彼女は水着姿でクリップに登場している。しかし、それでもやはり、このことに対して「恐ろしい反応」が起こった。「もし彼女がレイプの被害者だったら、こんなことはできない」と彼女は非難されたのだ。彼女はこう答える。「私には生きる権利があることを、彼らに示さなければならなかったのです」。

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この夏、伊藤詩織さんは加害者と日本(の法廷)で再会する。というのも、彼女の事件は刑事裁判では不起訴となったが、民事での裁判が開かれるからだ。彼女はすすり泣きのなか、こう語った。「(加害者と対面したとき)自分の身体がどう反応するのかはわかりません。私は生き延びています。しかし、被害の記憶が消えることは決してありません。あの夜の光景が、今でも夢に現れるのです」(了)

www.lexpress.fr

伊藤詩織さん、サイレンス・ブレイカー FEMINA

TEXT by Muriel Chavaillaz 2019.5.13

レイプの被害にあって以来、彼女は日本人の物の見方を変化させるために絶えず闘いつづけている。彼女は、#MeTooから派生した運動である#WeTooムーブメントを日本で起こした。そしてその著書『Black Box』は、今やフランス語に翻訳されている。

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彼女は雑誌『Grazia』でこう語っている。 「もっとも強く印象に残っているのは、私が自身のレイプ被害を公表したことに、世間の人たちがそれ以上に驚いたことです」© Geoff Pugh Shutterstock

伊藤詩織さんとは誰か?

2015年4月3日、伊藤詩織さんの人生は大きく変わってしまう。テレビ局の上層部の人間で、日本の首相に近い人物である山口敬之との会食のとき、彼女は意識を失い、目覚めるとホテルの一室で裸の状態でレイプをされていた。加害者は、彼女は性行為に同意していたと主張し、警察は彼女に被害届を出さないように勧めた。激しい非難や侮辱を受け、家族や友人たちから拒絶されながらも、伊藤詩織さんは正義がなされるよう闘った。彼女は勇敢にも、日本人が自らに禁じている行動をとった。つまり、声を上げたのだ。

なぜ話題になるのか?

彼女は自身の闘いを、今やフランス語に翻訳されている著書、『Black Box』の中で語っている。また、彼女は『Grazia』のインタビューでこう語っている。
「日本ではレイプの被害者は落ち込んで家に閉じこもり、恥ずかしさで沈黙させられているものとみなされます。私はそのすべてに耐えて生き延びることができるよう、闘う必要があったのです」
脅迫から逃れ、彼女は現在ロンドンで暮らしている。しかし、そのような状況でも彼女は女性たちを励まして、沈黙の掟を破ることを促し続けている。ハーヴェイ・ワインスタインの事件の後、彼女は日本で#WeTooムーブメントを作り出した。このハッシュタグは瞬く間に広まり、日本のメディアもようやく性暴力についての取材をし始めた。「日本経済新聞」の調査によると、日本では女性の2人に1人が職場でセクハラにあっており、上司に被害を報告する割合はわずか35%にとどまるという。

他の人たちはどう言っているのか?

フランス人ジャーナリストのミエ・コヒヤマさんは「Libération 」紙のインタビューで、こう指摘している。
「彼女は地獄を味わったのです。彼女は並外れた強さを持っています。私の父は日本人で、私は東京で学び、働いた経験があります。この国のことをよく知っているので、この若い女性にはびっくりさせられました」
闘いを続けることの助けとなっているもの

伊藤詩織さんがレイプの被害を公表したとき、彼女の家族は不安でおびえていた。彼女は『Paris Match』のインタビューでこう語っている。
「一年の間、妹とは話をすることが出来ませんでした。しかし#MeToo が起こってから、性暴力について話すことはそれほど難しいことではなかったことに、妹も気づいたと思います」(了)

www.femina.ch

伊藤詩織さんとは誰か?-レイプに関する沈黙を破ることによって日本に衝撃を与えた女性 CNEWS

TEXT by Tatiana Wakam 2019.5.12

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彼女は日本の#WeTooムーヴメントの象徴的人物となった。撮影THOMAS SAMSON / AFP


性暴力との闘いの象徴的人物である伊藤詩織さんは、日本で未だ非常に敏感な話題(であるレイプ)に関するタブーを打ち破ろうとしている。これは、この国での自覚を呼び覚ます一人の女性の肖像である。

今年の4月に、伊藤詩織さんの衝撃の書『Black Box』がフランスで出版された。これは日本での同書の出版の2年後のことである。この著作の中で、この30歳の若い女性は、日本の大手テレビ局の局長、山口敬之からどのように性的暴行を受けたかを語っている。

彼女は日本の性暴力被害者たちの代弁者となった

伊藤詩織さんはニューヨークでジャーナリズムを学び、その後、仕事に従事するために日本に戻った。当時26歳のこの若い女性には輝かしい未来が見えていた。すべてが大きく変わってしまう、2015年4月3日までは。彼女は知らない間に飲み物に薬を入れられ、目覚めるとそこは山口敬之の滞在するホテルの一室で、彼から性的暴行を加えられている最中だった。伊藤詩織さんは加害者に「やめて」と言ったと絶えず主張し、加害者を告発した。しかし、それでも山口氏は、彼女は性行為に同意していたと断言している。この山口敬之は日本で非常に権力のある人間で、その上、日本の首相と親密な関係にある。したがって、伊藤詩織さんの訴えが不起訴となったのも驚くべきことではない。
伊藤詩織さんは不正を正したいという感情に突き動かされ、日本のレイプ被害者たちの声を聞かせることに人生を捧げる決意をした。彼女はファッション誌『Grazia』の記事の中で、こう語っている。
「日本では、レイプの被害者は落ち込んで家に閉じこもり、恥ずかしさで沈黙させられているものとみなされます。私はそのすべてに耐えて生き延びることができるよう、闘う必要があったのです」

インタビューや記者会見といった風に、彼女はタブーを打ち破るために発言の機会を積み重ねた。そして特に、日本で被害者たちが遭遇する困難について、彼女は語っている。例えば、モーニングアフターピルを手に入れることや、また全く単純に、告訴をするための困難についてである。#MeTooムーブメントの真っ只中で、彼女は#WeTooムーブメントを生み出した。これは2017年、ハーヴェイ・ワインスタイン事件以後に再び活発になった、女性に関する社会運動#MeTooに相当するものである。彼女はこう説明する。
「私は声をあげることを恐れているすべての女性たちのために、顔を出して話をしたいを思っています。なぜなら、ここ日本では、警察も司法も、性犯罪の被害者たちを支援してくれないからです」

日本人のメンタリティと社会システムを変えること

伊藤詩織さんにとって緊急を要する課題は、日本人一般の被害者たちに対する見方を変化させることだ。
「もっとも強く印象に残っているのは、私が自身のレイプ被害を公表したことに、世間の人たちがそれ以上に驚いたことです。よくこう言われました。「だけど、どうしてそんなことをしたの?」と。まるで、悪いことをしたのは私であったかのようにです」
このように一部の人たちは、「彼女は加害者と酒を飲むことを承諾しなければよかったのに」と考えている。彼女が著書の中で言及しているNHKの調査によれば、質問を受けた人たちの11%が、相手と2人きりで食事をすることは性行為の同意のサインだと考えている。また、「日本経済新聞」の調査によると、日本では女性の2人に1人が職場でセクハラにあっており、上司に被害を報告する割合はわずか35%にとどまる。性同意年齢が13歳に定めれたこの国では、レイプ事件の95%が届け出られず、報告されるのは僅か4%である。

現在ロンドンで暮らし、フリーランスのジャーナリストとして働く伊藤詩織さんは、いつか日本に戻って生活することを望んでいる。7月には、彼女に名誉毀損で100万ドルを請求している加害者との裁判が開かれる。(了)

www.cnews.fr

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「伊藤詩織さん 日本でのレイプに関する沈黙を打ち破ったジャーナリスト」 Grazia

TEXT by Anna TOPALOFF 2019.5.5

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© PHOTO : GEOFF PUGH/SHUTTERSTOCK/SIP

ジャーナリストの伊藤詩織さんは、4年前に受けたレイプ被害を勇敢にも告発した。この問題についての日本での拒絶反応や、停滞した状況に狙いを定めた彼女の著書が、先日フランスで出版された。「日本では贈り物を受け取ったとき、「いいえ(結構です)」と言わなければなりません。それは伝統なのです。つまり、人が「いいえ」というとき、誰もがその言葉が「はい」という意味であることを知っているのです。このような状況で、女性が性関係を持つことに対して「ノー」と言ったとき、その拒絶がまったく価値を持たないことは、驚くことではありません」彼女はこのことについて、いくらか知るところがある。2015年、26歳のとき、彼女は日本の大手テレビ局の支局長から、乱暴にレイプをされた。彼女が何度も「やめて」と叫んだにもかかわらず、首相に近い人物である加害者の山口敬之は、彼女が性行為に同意していたと主張し続けている。そして、裁判所は彼女の訴えを証拠不十分で不起訴とした。しかし、伊藤詩織さんは屈服しないことを選んだ。

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自身で事件の捜査をし、防犯カメラの映像のおかげで、加害者が彼女をホテルの部屋に連れ込んだとき、彼女は知らない間に薬を盛られ、意識を失った状態だったことを証明することができた。意識を取り戻したとき、彼女は裸の状態で、ベッドの上で加害者にレイプされていた。彼女はそのすべてを、フランスで出版されたばかりの衝撃の書、『Black Box』の中で語っている。この本は、日本では2年前に出版され、激しい議論を引き起こした。その力強い言葉とは対照的な、穏やかで落ち着いた声で彼女はこう語った。
「日本では、レイプの被害者は落ち込んで家に閉じこもり、恥ずかしさで沈黙させられているものとみなされます。私はそのすべてに耐えて生き延びることができるよう、闘う必要があったのです」
「被害者らしく」振る舞わなかったため、彼女はメディアやネット上で、激しい攻撃を執拗に受けた。彼女はこう語る。
「もっとも強く印象に残っているのは、私が自身のレイプ被害を公表したことに、世間の人たちがそれ以上に驚いたことです。よくこう言われました。「だけど、どうしてそんなことをしたの?」と。まるで、悪いことをしたのは私であったかのようにです!」

ハーヴェイ・ワインスタインの事件と#MeTooムーブメントの起こった2017年秋、伊藤詩織さんは、ネット上で非難され、同業者たちからブラックリストに入れられ、家族からは拒絶され、ほとんど鬱状態だった。
「メディアで被害を公表してから、性暴力の被害に遭われた女性たちからの証言を、毎日受け取っていました。私が話す勇気を持ち、沈黙の掟を破ったことに感謝する内容のものです。私は集団的な行動を起こす時が来たのだと思いました」
しかし、勇気を出して公然と発言する女性はいなかった。それはもちろん、そのように自身の体験をさらすことによってもたらされる結果を恐れてのことである。しかし、それだけではない。
「日本では、自身の個別性を主張するのは、良くないこととみなされます。みな、自分を主張することを避けて、遠回しな言い方をするのに慣れてしまっています。ですから、誰も#MeTooと言うことを望んでいなかったのです。このことから、特に日本の女性たちのために#WeTooムーブメントを創り出す着想を得たのです」
すぐにこのハッシュタグは成功を収めた。例えば、この国で初めて、メディアが性暴力に関する調査をせざるを得なくなったことである。「日本経済新聞」の調査によると、日本では女性の2人に1人が職場でセクハラにあっており、上司に被害を報告する割合はわずか35%にとどまる。前述のメディアによる調査は、そのような社会での小さな革命である。
「そして、「レイプ」という言葉がメディアで初めて使われたのです!」伊藤詩織さんはこう喜ぶ。
だからといって、彼女はこれらの変化に満足していない。彼女の見方によると、日本のレイプに関する法律は、性同意の概念を含んでいないからだ。
「被害者が「ノー」と言った事実が、暴行を特徴付ける要素とはならないのです。加害者に対して、言葉だけではなく、体で抵抗したことを証明しなければなりません。ところが、被害者は暴力を受けて身動きができなくなる可能性があるのです。また、私のように、報告する勇気を持った時にはすでに体のあざや他の傷跡が消えてしまっていて、手遅れだったという場合もあります…」

この闘いをリードするために、伊藤詩織さんは、脅迫や執拗な攻撃から逃れるために離れなければならなかった日本に、戻らなければならないだろう。彼女はプロダクション会社を設立したばかりのロンドンと、性暴力に関するドキュメンタリーを撮影しているシエラレオネとを行き来する生活のなかで生きる意欲を取り戻してはいるが、それでもすぐに日本に戻るつもりだ。
「私に決して戻ってきてほしくないと思っている人が沢山いることは知っています。しかしそれは私の国です!私には日本で暮らす権利があるでしょう。だって、私は何も悪いことをしていないのですから」
そして彼女はその言葉を繰り返した。まるで、東京に戻る際に彼女を待ち受ける事柄に対して、覚悟を決めるかのように。というのも、加害者から名誉毀損で反訴された件で、7月に裁判が開かれるからだ。そして、加害者は彼女に100万ドルを請求している。(了)

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