「レイプに関して目を開く日本」Courrier International誌

TEXT by Ysana Takino 2017.6.21

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©弁護士ドットコムニュース


6月16日、日本で、性暴力に関する新しい法律が採択された。日本の性暴力に関する法律の文面は、1世紀以上ものあいだ、変化していなかった。この改正は、もみ消されたといわれる、あるレイプ事件がSNS上で議論を巻き起こしている最中(さなか)に行われた。
 

6月16日、110年間修正されていなかった性暴力に関する法律が、日本の国会で改正された。来月から発効する新しい法律の文面によると、加害者に課せられる刑は、現在の懲役3年から、5年へと延長される。また、これまでは女性器への男性器の挿入のみがレイプの定義に適うものであったが、今後は男性も被害者として告訴することが可能となる。未成年者に対する性暴力も、脅迫や身体的暴力がない場合にも有罪となる。これまでは脅迫や身体的暴力が、加害者を有罪とするために必要な要件であった。そして捜査も、被害者の告訴なしに始めることが可能になる。これが、被害者の支援団体から好意的に受け入れられた法改正の中身だ。しかしこれらの団体は、今回の法改正が、後から政府によって見直されるのではないかと恐れている。 自民党は性犯罪に関する法律の改正手続きを後回しにして、非常に異論の多いテロリスト対策法(の審議)を優先させた」と、「東京新聞」は残念がる。 

もみ消された事件 

レイプにまつわる議論は、日本のSNSを真っ赤に染めた。それは特に、「週刊新潮」が5月の終わりに、もみ消されたというある訴えに関する記事を掲載してからだ。加害者とされるのは、山口敬之、51歳。彼は著名な政治記者で、安部首相の側近とみなされている人物だ。「新潮」の刊行に続いて、異例の記者会見が原告の女性によって開かれた。その女性の名は、詩織さん。28歳のフリーランスのジャーナリストだ。 

性暴力被害者の75%が告訴することをあきらめる日本で、原告の女性がその身元を明らかにして公衆の面前に現れることは、一石を投じる効果を持った…。事件はネット上で炎上したが、国内の大新聞がこの事件に言及することはほとんどなかった。2年前にレイプされたという彼女の訴えを、検察は不起訴とした。そして、彼女がこの決定に対して不服申し立てをしたというニュースを、複数のテレビ局と、いくつかの週刊誌が報じた。山口氏はメディアに対してコメントを一切控えたが、法に触れることはしていないと疑惑を否定して、フェイスブック上で反論した。 詩織さんの証言によると、2015年4月、山口敬之が民営テレビ局TBSのワシントン支局長だったとき、彼は(ワシントンでの仕事のポストの)採用を詩織さんにちらつかせ、彼女の飲み物に薬を混ぜ、レイプしたという。 

彼女が告訴することを決心したとき、警察はまず捜査を開始するよりも先に、彼女に告訴を思いとどまらせようとした。「週刊新潮」は次のように書いている。 

「証言や集まった証拠資料があるにもかかわらず、地元警察が初めに出した逮捕状が取り消された。これは異例の出来事だ」 

事件が進行している間のこと、安部明恵首相夫人が、前述の山口氏のフェイスブックの投稿に「いいね!」をつけた。この行動は、ネット上で多くの人たちから「セカンドレイプ」と形容され、情報サイト「リテラ」でも同様に形容された。 

詩織さんは、SNS上を駆け巡ったヴィデオの中で、こう主張した。 

「私は、被害者がまるで犯罪者のように隠れなければならないのはおかしいということを主張するために、顔を出して声を上げることにしました。私は人々の関心を呼び覚まし、この不平等主義的な司法を告発したいのです」(了) 

(元記事)

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