「伊藤詩織さん 日本でのレイプのタブーを打ち破ったジャーナリスト」 France Inter フランス語ラジオ番組翻訳(抄訳)

 

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伊藤詩織さん© AFP / Thomas Samson

2019.4018

Sonia Devillersさん: 伊藤詩織さんにお越しいただきました。彼女はまだ29歳でとても若い。彼女はどんな対価を払ってでもジャーナリストになりたいと思っていました。彼女は著書の中でずっと、それが払うべき代償なのか自問しています。彼女は奨学金を得るために格闘し、旅をし、勉強をし、特にアメリカで勉強をしました。伊藤詩織さんは、彼女にワシントンでの仕事のポストをちらつかせていたTBSの高い地位にある男性から、飲み物にドラッグを混ぜられ、レイプをされました。その夜の記憶は欠落しています。しかし目覚めたとき彼女が目にしたのは、悪夢のような光景でした。伊藤詩織さんは勇敢にも被害について話しました。彼女はレイプ被害を勇敢にも話した唯一の女性たちのうちの一人です。なぜ被害について話したかというと、警察も司法もまたメディアも彼女を見捨てたからです。彼女は自身で事件を捜査しました。その著書『Black Box』は冷ややかで資料に裏付けられた物語で、非常に厳密なものです。

 

質問1:伊藤詩織さん、ようこそパリへ。2015年、26歳の時に起こった事件について、あなたは次のように書いていますね。下腹部の激しい痛みで目が覚め、気付くと裸の状態で見知らぬホテルの一室にいた。加害者とされる男性があなたの上におい被さっていて、避妊具を付けない性器が目に入った。「痛い」と何度も言ったが、彼は行為をやめなかった。ようやく解放され、鏡を見ると体はあざだらけで出血していた。その夜のことを何も覚えていない。これはあなたが本の中で語っている、目覚めときに起こったことですが、彼は無理矢理あなたをベッドに押し倒し、再び犯そうとした。あなたは必死に脚を閉じた。彼はあなたにキスしようとした…。目覚めたときに起きたこのようなこと、それだけでもすでにレイプ未遂だったということですね?

質問2:ともかくレイプ未遂だったということですね。あなたが部屋を出るとき、彼はあなたにこう言います。「よし、君は合格だよ。下着ぐらいおみやげにさせてよ」と…。彼自身のレイプの思い出にですね。あなたは(寿司屋からホテルに行くまでのことを)一切何も覚えていませんが、著書の中で警察署と病院で受けた対応を、あなたは非常に正確に描写しています。まず病院での話から始めましょう。あなたはこう言っていますね。「婦人科医は私を見ることさえしなかった」と。

質問3:次に警察署での話に移ります。本の中で改めて指摘されていますが、日本の女性警察官の割合はわずか8%なのですね。

質問4:あなたの行なった捜査についてです。これは自身の事件についてのジャーナリスティックな捜査であり、そして日本の司法のメカニズムの中に没入するような綿密なものでもあります。日本人にこの司法システムについて理解してもらうため、そして日本人が司法システムに対して受け身になるのではなく、システムを問題にし、検討してくれるようにするために、あなたは自身の捜査を本に綴ったのですね?

質問5:おっしゃる通りです。それで、加害者とされる山口敬之という男ですが、彼は逮捕されるはずだったのが、その逮捕が最後の瞬間に取り止めになります。この男は安倍首相の伝記作家であるのですが、はっきりとさせておかなければならないのは、日本の政治権力の側からのこの事件についての言及はあったのかどうかということです。

質問6:そしてあなたは裁判の手続きを続け、訴訟は進行中です。証言をし、告発に乗り出す女性ジャーナリストはほとんどいません。それでも多くの女性ジャーナリストたちがあなたと連帯しています。しかし大部分が匿名で連帯を示す行動をとっています。告発することにはどのようなリスクがあるのですか?

質問7:それでも、2017年にあなたが被害を明かしたのに続いて、レイプに関する法律が改正されました。先程おっしゃいましたが、改正前の法律は100年以上前に制定されたものでした。これはまったく、法律に関して錯誤的なことです。改正を受けて、レイプの定義が広がりました。改正前の法律では、女性器に対する男性器の挿入のみがレイプとされていました。それが現在の法律では、男性もレイプの被害者として認められるようになったのです。そしてまた、口淫性交と肛門性交も重犯罪や軽犯罪と見なされるようになり、刑期も在来の3年から、5年に延長されました。しかし、法律では大きな問題について触れられていません。つまり性同意の問題と、レイプ事件は顔見知りの人物から、閉ざされた場所で起こっているという事実です。このような状況での性同意の問題にもう一度触れておきましょう。伊藤詩織さん、レイプ事件の大半が実際にこのような状況下で起こっているのでしょうか?

質問8:あなたは本の中で、ホテルの一室で目覚めたときに自分の体がどのような状態になっていたかを描写しています。そして体に傷やあざが出来、出血していたと語っていますね。このことは病院では記録されたのでしょうか。そしてまた、このことはあなたがおそらく抵抗したことの、そしてともかく暴力を受けたことの証拠となる情報として、調査書類に記録されたのでしょうか?

質問9:最後の質問です、伊藤詩織さん。もしこの質問をあまりに個人的すぎると思われたなら、答えていただかなくてもけっこうです。あまり覚えていないこと、つまり記憶の欠落を抱えてどのように日常を生きていくのでしょうか?そして最後に、ドラッグによって消え去ってしまった記憶を遡るために、自分自身と闘うものなのでしょうか?

Sonia Devillersさん: 伊藤詩織さん、ありがとうございました。これでこの非常に感動的なインタビューは終わります。あなたの勇気に感謝します。そして勇気を出して事件について話し、著書『Black Box』を書いて下さったことに感謝します。この著書はフランスでPicquier社から出版されています。またフランスに来てこの話をして下さり、ありがとうございます。

 

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