「いくつかの声があがったものの、日本は#MeTooムーヴメントに耳を貸さないままだ」L'Express

日本では、性暴力やハラスメントを告発することは、未だタブーなままだ。

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タクシー運転手のサイトウ・カズヨさん。彼女は暴行被害を避けるため、現在は夜間勤務をやめている。2017年11月17日、東京で撮影。©afp.com/Behrouz MEHR

TEXT by AFP 2018.4.1

被害を受けてから20年、音楽業界から離れて久しい彼女は、#MeTooムーヴメントにより被害者たちがオープンに話し始めたことに励まされ、自身の苦しみと向き合うことを決意した。この#MeTooムーヴメントは世界中の多くの国々に波及したが、性暴力の被害者たちがむしろ沈黙するように励まされる日本では、いくつかの証言が現れただけで、その影響は限定的なものだった。ナカジリ・リンコさんは、17歳のときにプロデューサーの男性からレイプの被害にあった。この男性は彼女に、CDのレコーディング契約を約束していた。彼女は自身の仕事の夢が断たれてしまうことを恐れ、一度も被害を打ち明けなかった。

ナカジリさんは語る。「日本で被害について話すのはほとんど不可能です。レイプに関して恐ろしいタブーがあり、世間の人たちはそれを秘密のままにしておくことを選ぶからです」

現在二児の母である彼女は、「夜更けのスタジオで」レイプされ、「その後も同じことが何度も繰り返された」と語る。そして、「抵抗したり、そのことを話したりしたら、自分のキャリアが終わってしまうのではないかと恐れていました」と説明する。

ハリウッドのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイの事件は、日本のメディアによっても報じられた。しかし、国内にも潜在的に存在する同様の状況に強い関心を寄せるメディアはほとんどなく、声をあげる藝能人女性もほぼまったくいなかった。

「脅迫」

ライターでブロガーのはあちゅうさんは、その中での例外の一人だ。彼女は(2017年)12月に、電通グループの責任者、岸勇希から職場で受けていたハラスメントについて詳しく語った。彼女の証言はいくつものメディアによって報じられ、岸勇希は公に謝罪した。電通を退職後、彼は自分の会社を設立していたが、告発を受けて辞任することにした。「大きな責任を感じています。社内に不安を引き起こしたことに対してです」

社会がある種の家父長制に染まったままの日本で、この類の暴力を告発することは、重大な行為である。伊藤詩織さんは昨年、自身の経験を語ったことで大きな代償を払った。この28歳のジャーナリストは、2015年にテレビ業界の男性から仕事の話をするために夕食に誘われ、そしてドラッグを飲まされてレイプされたとして、男性を告発した。

「私のことを「あばずれ」だとか「売春婦」呼ばわりするメッセージを受け取りました」

自身の経験を公にし、そしてそれを特に著書『Black Box』のなかで語ったことで、彼女はネット上で大量の攻撃を受けた。

「私のことを「あばずれ」だとか「売春婦」呼ばわりするメッセージを受け取りました」と、先日ニューヨークの国連本部で会見をした彼女は思い起こす。そして、「脅迫も受け、家族の生活が心配でした」と、彼女は打ち明ける。

彼女はまた、被害後に受診した婦人科での診察が、まるで「取調べ」のようになってしまったことを残念に思った。そして、等身大の人形を使って事件の再現をするよう彼女に求めた警官たちの態度を彼女は告発している。

100年以上改正されていない法律

「#MeTooムーヴメントが言葉を解き放ち、被害者たちがオープンに話し始めたことは間違いありません」と、中島幸子さんは強調する。中島さん自身も配偶者暴力の被害者であり、彼女はNGO団体「レジリアンス」を設立して、今では被害者たちを支援する側に立っている。

しかし、伊藤詩織さんの話は「社会の大きな変化を生むことはありませんでした。彼女の事件でも何も起きず、誰も逮捕されませんでした」と、中島さんは残念がる。警察は捜査を始めるまでに3週間待ち、加害者とされる男性は非難を否定し、彼が警察から追われることはなかった。伊藤詩織さんは、彼に対する民事訴訟を起こした。

中島幸子さんは、100年以上前に制定され、昨年国会で改正されたに過ぎない性犯罪に関する法律を問題にしている。今回の改正では、レイプの概念が拡げられ、刑罰も強化された。

法務省によると、昨年、レイプ事件の訴訟手続きで裁判所に移送されたものはわづか3分の1のみで、裁判にかけられた1678名のうち、3年以上の実刑有罪判決を受けたのは、285名であった。

また、2017年に政府の実施した調査によると、レイプの被害者で、警察に報告したと答えた人の割合は2.8%で、58.9%が被害について誰にも、友人や家族に対してさえ話さなかったことがわかっている。

日本では、「多くの男性が、女性の体を自分の所有物だと考えていますので」と中島さんは指摘する。そして彼女は、この国では「同意の定義がまったく歪められている」と考えている。

「空き巣被害を警察に報告に行ったときに、「なぜそのとき家にいなかったのですか?」と訊かれますか?」

また、(性暴力を告発する女性たちに向かって)「あなたがそれを引き起こしたに違いない」と言うのも、まったく馬鹿げたことだと彼女は憤慨する。(了)

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