「自身のレイプ被害を認めさせるための伊藤詩織さんの闘い」TERRAFEMINA

TEXT by Marguerite Nebelsztein 2019.3.21

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4月初めに(フランス語訳の)出版される著書『Black Box』の中で、写真家でジャーナリストの伊藤詩織さんは、性暴力の被害にあった女性たちにとってほとんど助けとならない傾向にある日本の司法システムを描写している。本の中で自身の受けたレイプ被害について語った著者の伊藤詩織さんは、状況を変化させることを望んでいる。彼女は #MeToo の波が起こる以前に、日本での性暴力についての開かれた議論の発端となった人物である。写真家でドキュメンタリー映画作家の伊藤詩織さんは、イギリスからコロンビアまで、世界中で働いた経験を持つ。4月4日にフランス語訳が出版される自著『Black Box』の中で、彼女は自身がレイプ被害を受けた後の日本のシステムとの闘いを語っている。
ジャーナリストとして働き始めた2015年、22歳のとき(原文ママ)、彼女はTBSのワシントン支局を指揮していた山口敬之支局長を信頼していた。山口氏は、彼女に働き口を探してみることができると請け合った。ある夜、二人は就職について話し合うために東京で再会した。山口氏は伊藤さんを連れ歩き、彼女に酒を飲ませた。彼女がホテルの一室で裸の状態で目覚めるまで。そして伊藤さんは、その夜の(会食の)終わりについて一切覚えていなかった。彼女は山口氏にレイプされたと告発した。彼女は、山口氏が目的を遂げるためにドラッグを使用したと疑っている。

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結果、真実が認められることを心から望む彼女の、断固たる闘いが始まった。告発後、彼女は事件がまともに取り扱われるよう、警察当局者と闘うことになる。そして彼女は自ら書類を作成し、告訴をしたいと繰り返し頼み、防犯カメラの映像を消さないよう当局者に懇願するために、被害現場のホテルを確かめに行くなどしなければならなくなった。
そしてついに、捜査員も事件が進展するよう彼女を手助けしてくれるようになる。ただし、アメリカから帰国した際に空港で逮捕されるはずの彼女の加害者の逮捕が、警察の上部からの指示で、最後の最後で取り止めになるその日までは。
伊藤詩織さんの事件は、政治権力も、影響力をもつ人物たちをも巻き込んだ。彼女は語る。「「日本で働くことはできなくなるかもしれませんよ?」これが捜査員が当初から私に繰り返し言っていたことだ。そして私もそう思い込み始めていた。まるで何も変わっていないかのように振る舞って加害者と同じ業界で働くことは、あまりにも不安極まりないことだった。私が警察に行き、彼は絶えず復讐しようとすることが出来た。私は、彼が私を監視させ、圧力をかけることを恐れていた。彼に対する逮捕状が無効になるのに、警察の上部からの一言だけで十分だったのだ。」次に彼女はこう付け加える。「私を沈黙させるために、あらゆる手段が存在したに違いない。私の想像を超えた、あらゆる手段が。私は次第に追い詰められたように感じていた。」
彼女は著書の中で、自身に起こった出来事を、ジャーナリスティックで綿密な文体で、細大漏らさず書き記している。警察で冷たくあしらわれ、誤った助言を受け、彼女は「強姦(viol)」と「準強姦(quasi-viol)」という言葉が口にされる日本で、性暴力の被害にあった人たちを受け入れる場所と手続きとがけていることに気づく。

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司法と社会とがこの問題を捉えるのに苦労する日本で、彼女は自身が手続きを変える前例となることを望んでいる。世界経済フォーラムの最新の「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は149ヶ国中110位に格付けされている。この非常な家父長制の国において、女性たちは暴力の被害にあった際に、沈黙してしまう。地下鉄の中で若い女性たちは、痴漢に慣れっ子にならなければならない。日常の攻撃者で、少女たちを躊躇なく襲う、ごくありふれた人たちである痴漢に。伊藤詩織さんは、自身も子供時代に電車やプールの中といった公共の場で痴漢にあったと語っている。民主主義国家として、日本はその司法システムの問題の多さを指摘されている。訴訟手続きには非常に時間がかかり、ときには数十年かかることもある。そしてまた、原告には起こりうる裁判の費用が返ってくるわけではない。こういったことが、多くの人たちが闘いに身を投じることを押し止めている。彼女の感情は、レイプの被害者が辿る道のりを説明するためにすり減ってしまった。彼女は二重の苦しみを抱えている。彼女は自身のケースが正義に基づいて扱われるよう、闘わなければならない。またそれだけでなく、仕事を続けながら、PTSDに苦しむ自身の人生を再建するために闘わなければならない。彼女は日本の社会を変えようとして、自らの闘いを公にした。

『Black Box』伊藤詩織著 Picquier社 Jean-Christophe Helary , Aline Koza訳 19,50€ 4月4日発売

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