文藝欄 伊藤詩織さんの『Black Box』 OCCITANIE JAPON

 

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©Philippe Picquier

2019.3.28

今回は伊藤詩織さんの『Black Box』を取り上げる。日本には重犯罪に関して超保守的な側面や、被害者たちが自身の権利を行使するのに苦労し、最終的に当局からごくわずかな配慮しか得られないといった状況がある。これはその日本での、ほとんど非現実的ともいえる、衝撃的な証言である。
#MeTooムーブメントが広がるなか、著者の伊藤詩織さんは加害者を告発するため、自身の受けた性暴力と、これまで通り抜けて来た十字架の道について詳しく語った。この最近起こった事件は、彼女の加害者が日本の首相、安倍晋三に近い人物であることから、日本でも海外でも大きな話題となった。
この本は4月4日にフランスで、Picquier社より出版される。

あらすじ

日本でレイプの被害を訴えることは、女性たちにとって、まさに社会的自殺を意味する行為である。それにもかかわらず、一人の女性が顔を出して話をするリスクを取った。
2015年、26歳の伊藤詩織さんはジャーナリストとして働いていた。ある夜、彼女は大手テレビ局の支局長(当時)で首相に近い人物である山口敬之と仕事の話をするため、レストランで落ち合った。数時間後、ホテルの一室で意識を取り戻すと、レイプをされていた。
行政当局の不誠実で意欲に欠けた対応や、メディアの沈黙に直面した詩織さんは、自身の事件の捜査を単独で進めることになる。今もなお、彼女の訴えは受理されていない。
あなたの手にするこの本は、彼女の物語であり、声であり、そしてとりわけ、日本の社会が性暴力の被害者たちに注ぐまなざしを変化させるための彼女の闘いなのである。

なぜこの物語を読まなければならないのか?

深刻な物語を超えて読者の前に示されるのは、まさに日本の警察と司法システムの只中に潜り込むような体験である。さらにそこに、彼女の事件を解決することのない社会的拘束が加わる。この胸を突き刺すような悲痛な物語は、日本の司法に関しての、そして多くの場合ないがしろにされ、踏みにじられる被害者たちの権利に関する日本社会の知られざる側面を、あなたに気付かせることだろう。(了)

occitaniejapon.com